スウェーデン

■ユニバーサルデザイン・シンポジウム(3)スウェーデンの場合

「(1)ユニバーサルデザインの定義」
「(2)若手デザイナーの作品」
 からの続きです。

★1 なぜスウェーデンは進んでいるのか?
 ダーク氏は、スウェーデン人です。
「スウェーデンでは、なぜ福祉や社会制度がユニバーサルデザインに即対応して
いけたのですか?」という質問に答えて――
・スウェーデンでは1960年代から既に高齢化社会に入った(人口の2割以上
が高齢者=身体の自由が利かなくなってくる)ため、40年前から取り組みが始
まっていた。
・国の人口が900万人しかいない。
・フラットな組織=意思の政策反映の距離が近い・速い。
・障害者団体の力が強く、政府とのコミュニケーションが密で、やりやすい。

○スウェーデン基礎データ

 驚いたことに、スウェーデンでは、たとえば
・障害があって在宅勤務しかできない場合にはそのための情報機器などを税金で
購入してもらえる。
・自動車の運転ができるように、特別な装備も税金で整備してもらえる――
といったことが当たり前に行われているそうです。
 ユニバーサルデザイン(エルゴノミクス)の開発が進むはずです。

 もっとも、ダーク氏自身も「福祉予算が国のGNPの半分を使ってしまっている。
この状態が永遠に続くとは思えないのだが」とお話されていましたが、
言葉のはしばしから、自国に対するプライドを感じました。

★2 ノーマライゼーションの思想とスウェーデン
「ノーマライゼーションの思想って、スウェーデンではどう受け止められている
んですか」の質問に対して――

・昔は、特別な人たちは特別な場所に集めていた。しかし、それはノーマルな社
会ではない。どんな人も同じに暮らせる社会にしていくように動いてきた。
・もしも、道路のデザインが悪かったら、「普通の人」と言われる人もとたんに
道に迷い、障害者になるじゃないですか? その意味では、デザインによって、
どんな人も不自由になったり、自由になったりする。

 若手デザイナーは、「私もユニバーサルデザインというより、ノーマライゼー
ションという考え方でくくるほうが好きです」と発言していました。
(けれども、彼は、「障害者もノーマルになる」という誤解を持っていたように
感じました。ノーマライゼーションの思想は、社会を、ノーマルにするという根
元的な思想です。詳しくは関連記事をご参照ください。)

 色々と勉強になったシンポジウムでした。

【連載記事】
・ユニバーサルデザイン・シンポジウム(3)スウェーデンの場合
「ユニバーサルデザイン・シンポジウム(2)若手デザイナーの作品」
「ユニバーサルデザイン・シンポジウム(1)ユニバーサルデザインの定義」

【関連記事】
【思想】ノーマライゼーション