【あした・きらりん】カイパパから航薫平さんへのメール(1)

■はじめに
 カイパパがアニメ「あした・きらりん」の作者航薫平さんにあてたメールを紹介
します。
「あした・きらりん」は、大阪市が人権作品を募集した2000年の「ヒューマニティ
大阪市長賞最優秀賞」に選ばれ、2004年3月にテレビの30分番組として放映予定
の作品です。この中の登場人物に「自閉傾向」の女子高校生が登場し、主要な役
になっています。
 まず、なぜ私が作者とやりとりをするようになったかの経緯を説明します。
■これまでの経緯
(1)ブログにおける議論の波及 2004年01月04日
 私が「あした・きらりん」のことを知ったのは、NWatchさんの
「自閉傾向持つ宝塚市の女子中学生がアニメの声優オーディションに挑戦←一見いい話だけど 」
(2004年1月3日)の記事でした。

「自閉傾向持つ宝塚市の女子中学生がアニメの声優オーディションに挑戦 福島
区/大阪」@毎日新聞(大阪)(2003年12月24日)の記事を読むと「いじめで自閉
症になった」とミスリーディングする内容だぞ
とNWatchさんは指摘されています。
 毎日新聞の記事を読んで私も同じ感想をいだきました。

(2)こうだったらいいな!〜自閉症アニメ「あした・きらりん」 2004年01月28

 私は、「あした・きらりん」の情報は、毎日新聞の記事だけしかありませ
んでしたが、「こんなストーリーだったらとても啓蒙的なアニメになる!」とい
う提案を書きました。

(3)「あした・きらりん」作者からコメントをいただいた 2004年02月07日
 (2)の記事に対して、「あした・きらりん」の作者航薫平さん自らコメントを
つけてくださり、「シナリオを読んで感想を聞かせてほしい」と依頼されました。
 メールでシナリオを受け取り、私の感想を伝えたのが以下のメールです(一部
修正を加えています)。

■2004年2月10日カイパパのメール
 カイパパです。お返事が遅くなりました。
 きちんとまとめなおして送る時間的な余裕がおそらくないと思うので、思った
ままを書き送ります。雑になっていると思いますが、お許しください。

航薫平さん wrote:
>  私としてぜひお聞きしたいのは、
> (1)内容に「あやまり(症状や発言などで「これはありえないよー」という表現)」は
> あるのか。

○自閉症(広汎性発達障害でもよい)という言葉は、どこかで入れる必要がある
と思う。(あるいは、「生まれつきの障害」という表現でもよい)
  場所は、彩子の母親のセリフでしょう。

★1 彩子の母親のセリフには不足があると思います
 いくつか、自閉症(発達障害)を推測させるキーワードが入っているが、
【そういった彩子の特徴の結果→いじめられた。友達が出来なかった】
という内容しか伝わってこない。
 このセリフで(説明するのはここしかない!)、「彩子は(見た目ではわからないが)
生まれつきの脳に障害があって、厳しく治そうとしても治すことができない
苦しみがある」
といった内容を含めなければいけないと思います。

 私は、この脚本を読んで、毎日新聞の記者が誤解した理由がわかりました。唯
一の説明的なこの母親のセリフを、自閉症の知識をもっていない人が読めば、
「彩子の特徴は←いじめによって形成された」と逆も真なりと思うような内容だから
です。

航薫平さん wrote:
> (2)障害を持っている人、そして支える人を励ますものになっているのか。

★2 元気が出る内容か?
 私は、このストーリーを一貫して流れるテーマは「いじめ」「差別」だと思い
ました。
 私が、脚本を読んで思ったことは、タカオにしても、他の彩子をいじめる生徒
にしても、「底辺校」の生徒という差別を受けてきて、ストレスをためている。
そのストレスのはけ口の一つに彩子に対するいじめがあるのかなと思いました。
 彩子をからかうタカオも、学校の外へ出れば、「ムダ高」と落ちこぼれのレッ
テルを貼られて屈辱を受ける。いじめが連鎖している背景を感じました。
 しかし、それは今のストーリーからは明確には伝わってきません。

?タカオの彩子に対する接し方の変化の「転回点」がどこなのか、イマイチ伝わ
らないのです。

○ごみ収集をやっている先輩の姿を見て、タカオが感じたことはなんなのか? 
○彩子が不器用で、硬直的な行動をとり続ける(しかし、そこに純粋さというか、
この子たちのもつ光がある)姿から感じたことはなんなのか?

「みんな、自分より弱い者をいじめのハケ口にするけど、そんなの違う、気持
ちのいいことじゃない。
 彩子は「どうしようもなく違っている」けど、それでいいじゃないか、
 タカオだって、なんでもできる人間なのか? 学校を出たらみんなに馬鹿に
されて惨めな思いをしている。
 みんな違っている、それは、みんなハンディがあると同じじゃないか?」

 ――そういうタカオの中での葛藤、「転回」を説明するセリフが必要だと思いま
した。現在の脚本には、まったくその趣旨のセリフは書き込まれていません。
 でも、それが、この短い作品に込められた本当のメッセージだと思うんです
(私の単なる深読みかもしれませんが)。

 今のままでは、まるで、タカオや、他の生徒たちの中の「転回」が見えてこな
くて、単に「彩子に同情して」「ほだされて」やっているように見えてしまうの
です。

「あした・きらりんは、自閉症に特化していない」と航さんはおっしゃいました。
 その真意は、この作品が、自閉症に限らず、
人と少しでも違ったところがあると差別する――その心理に対して「違う!」
と伝える
ものだからだと解釈したいのです。

 今のままだと率直に言って、「自閉症の少女」というアイテムが、便利に「狂
言回し」として使われている
不快な感覚が残ります。(スケジュール変更の意味
がわからず作業を続けようとする彩子は、やっぱり私から見たら痛々しい……)

【図式的に言うと】
 ムダ高=自分たち=ごみ=空き缶=巨大壁画へ生まれ変わる(リサイクル☆)
→ひとりひとりが素晴らしい存在!
 その本当のテーマが、ガツンと伝われば、すばらしい作品になると思うんです
(^^)。(自閉症についての啓蒙的要素は、ビデオ化の際に期待します)

 このままでは「なんとなく美談」で終わってしまうんだろうな、という危惧が
あります。
 願わくば、上で書いたような、「すべてのいじめの無意味さ」をみんなが気づ
くような挑戦を期待しています。
 欲張りですみません。

 色々と勝手を言いました。作画はもう進んでいるとのこと、最後までギリギリまで
努力されている航さんに敬意をいだいています。

 作品の完成たのしみにしています。

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 カイパパ
\(^^)カイ君とお友だちが安心してしあわせに暮らせる世の中に!(^^)/
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【参考記事】
「あした・きらりん」のシナリオを読んで@TamagoBlog -It's a picture world-

(続きます!)