【あした・きらりん】作者:航薫平さんからのお返事

 この記事は【あした・きらりん】カイパパから航薫平さんへ(2)からの続き
です。

■はじめに
 アニメ「あした・きらりん」作者、航薫平さんの質問にお答えして、シナリオ
の2か所について私なりの意見を奔放に書かせていただきました。「奔放に」書
けたのは、「この作者(そして、製作チーム)は信頼してもいい人たちだ」と見
通しがもてたからでした。
 私の意見の要点は次のとおりでした。
◆1 彩子の母親のセリフ〜(3)(a)の質問にお答えして
「彩子はちょっと変わった子」→「でも障害があるなんてわからない(こんな子
どこにでもおるねん)」
ところが→「家族の話を聞いて」→「理解されにくい障害と知った」

 やはり、このプロセスを、短い、母親と有里とのやりとりの中に盛り込まない
とダメだと私はあえて断定的に伝えました。

◆2 最後のタカオのセリフ〜(3)(b)にお答えして
 今のままだと率直に言って、「自閉症の少女」というアイテムが、便利に
「狂言回し」として使われている不快な感覚が残ります。(スケジュール変更
の意味がわからず作業を続けようとする彩子は、やっぱり私から見たら痛々し
い……)

 そこで、「苦手があっても」に「障害特性」の意味をこめて、
「この人がいたからクラスは1つになれた。おれたちみんな、苦手があっても
できることがある!って教えてくれた、彩子ちゃーん」
という案を提示しました。

 これに対しての航薫平さんの対応は――今回は、航薫平さんの生の文面を紹介
します。メールはダイジェストにしてあります。文中「※」はカイパパが補った
ものです。
 確認になりますが、この作品はアニメで、作画はほとんど完了した状況です。
航薫平さんがどんな思いでこの作品に取り組まれているか、みなさんにもお伝え
できたらと思います。

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 もうわかっておられると思いますが、(※自分がカイパパ通信blog☆自閉症ス
ペクタクルにコメントを書き込み、シナリオを見てもらおうとした理由は)「勉
強不足で話しを書いたことに対するびくびく」でした。
 ネットだけの「顔色の見えない」関係では、必要以上に互いを警戒してしまうし、
「あら」の部分が目について刷り込まれてしまう(=許せなくなる)から初訪問はこ
わいです。
 でも、このときのぼくの気持ちとしては、「この人たち(※カイパパとTamagoBlog)
にわかってもらえないような作品なら、意味ないな」でした。

「世間の人に自閉症を理解してもらおう」がスタートではなく、「ぼくの目の前
にいた素敵な生徒たちの姿を描こう」としたら、生徒の1人が「たまたま」自閉症
だったというのがスタートです。だから、「自閉を描いた啓蒙的作品」として「きら
りん」が取りあげられることに大きな「おそれ」がありました。
 とにかく、「あやまり」のないものにしたい。
 そして、「最近の高校生、なっとらんぞ」「なんやねん、最近の教師は。やる気な
いんちゃうか」などと指弾されている「学校」「教師」に勇気がわくような作品にし
たいと思うのと同じ気持ちで、「自閉症の子どもたち、そして彼らのまわりの人た
ち」に勇気がわく作品になっているのか、が気になっていました。

 いやあ出会いが遅かったなんてない。「時間切れ」前にお2人と出会えて、本当に
感謝してます。

 さて、きのうは(「も」ですね)、監督、スタッフと、根元的な、熱い議論をしま
した。
「障害」「個性」「理解」「共生」「認め合う」「成長」……つい先ほどまで「利益
が」とか「販路が」とか言ってた人らが、口に泡飛ばして言い合います。
 今までお会いしてきた養護学校の方々、自閉症児のご家族、そして高校生たちと一
緒に「創ってる」だけに、「利潤追求」の一価値だけでははかれない、人間としての
尺度で話しがなされます。

★1 彩子の母のセリフについては、作画との問題、その後の有里の反応の問題
等がからみますが、さしあたって、「生まれつき」「障害」ということばはこ
こでなんとか追求したい、という方向で詰めています。(作画との最終的な詰
めがありますが)

★2 そして、ラストのタカオの彩子紹介
 これも、この作品を世に出す前に気づいたことに感謝してます。
 それとともに、このマイナス(不適切な表現だったこと)を、プラスに転化さ
せてみようと考えました。
「わからんときは子どもにきけ」
 ぼくのモットーです。
 12名の声優中高生に、きいたのです。
 声優にとって「脚本(ほん)」はすべてですが、さすが、学習をすすめている高校
生たちです。
「気になる表現はないかな?」
 という問いかけに、1人の男子生徒がいいました。
「(前略)彩子はガマン強いんじゃない……」
 他の、「ああ、そやった。何で気がつかなかったんやろ?」という高校生たちと、
続けてきた学習会の「まとめ」として、全員で考えることにしました。

「きみたちが、彩子ちゃんとひと夏の文化祭を一緒に創ってきた3年8組生として、
最後、彩子をなんと紹介するだろう?」
 
 若い彼らの「がつん」に期待です。

「まだまだ粘り悩みますから」
 監督・松林からの伝言でした。
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【関連過去記事】
(5)【あした・きらりん】カイパパから航薫平さんへ(2) 2004年2月14日
(4)【あした・きらりん】カイパパから航薫平さんへ(1) 2004年2月13日
(3)「あした・きらりん」作者からコメントをいただいた 2004年02月07日
(2)こうだったらいいな!〜自閉症アニメ「あした・きらりん」 2004年01月28日
(1)ブログにおける議論の波及 2004年01月04日