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【用語】チャレンジド=挑戦を受けた人(2)

(この記事は【用語】チャレンジド=挑戦を受けた人(1)からの続きです。)

★4 キリスト教世界の言葉
 チャレンジド”challenged”は受身形です。「挑戦を受けた者」という意味です。チャレンジャー=「個人の自由意志で挑戦する者」ではありません。
そうだとすれば、誰から、何から挑戦を受けているのでしょうか?

 アメリカはキリスト教的倫理観で形作られた社会ですから、ここで意識されているのは、「神からの挑戦」ということでしょう。
 私は信仰を持ちません。しかし、以下の立論には共感を覚えました。それは、私が福祉の倫理的根拠だと思う「立場の互換性」(後述)に通じるからです。

★5 「くじ引き論」〜キリスト教世界の価値観
 この立論は、2002年のつぼみパパメーリングリストでASAJIさんが提起され、話題になりました。要旨は、次のとおりです。
○キリスト教世界では、次のような発想があるから、障害者に対して親身になった福祉が行われているのではないか(仮説)
・障害は、誰かしらに必ずもたらされる不可避なもの
・「くじ引き」をするように、誰が背負うかを決定づけられる(それは神によって)
・そうであるなら、障害者は、他の「健常に生まれた」人のために、(ある意味)犠牲となった人といえる
  →だから、社会(コミュニティ)が責任をもつのだ

★6 立場の互換性(交換可能性)=福祉を支える倫理的根拠
 私は、理屈っぽい人間です。自分の子どもが「福祉の受益者」になるという事態に直面して一所懸命考えて「結局これだな」と思ったのが、「立場の互換性」の理論です。
○障害者は「特殊な存在」ではない
・人間はだれもが加齢や病気、事故によって障害者となりうる
  =今、「健常」な状態だとしても将来はわからない
・また、一定の確率で障害をもった子どもが生まれる。
  =あなたも「障害児」の家族になるかもしれない
→全ての人が、福祉の受益者となりえる=つまり、いつか立場が換わりうるということ(立場の互換性)
  =それは遅かれ早かれいつか来ることであって、現在福祉の対象となっていることを恥じたり、卑下したりする必要はない
 言い換えるなら、福祉は、「全ての人のためのセーフティネット」なのです。これがなければ、人は安心して子どもを産むことも暮らしていくこともできない。

【用語】チャレンジド=挑戦を受けた人(3)へ続きます!

【参考過去記事】
 立場の互換性について
【基礎知識】WHOの新しい障害の定義:「国際生活機能分類ICF」
・ICF公式サイト http://www.who.int/icidh