■リストラ@「目耳録」中日新聞

 先日の中日新聞のコラムで、「おしい! もっといい記事になるのに」と思うものがありました。
 「目耳録」という記者が書く匿名コラムです。

「リストラ」目耳録@中日新聞2004年3月3日(夕刊) Web版なし
「実は息子さんのことでちょっと―」
 朝8時、電話が鳴った。母親が出ると息子の会社から。
 受話器の向こうの上司は、電話では言えないという。ならばと素っ飛んで行ったら、経営が苦しいので辞めてもらいたいという。話を聞いた母親は、どのみち辞めさせられるならと、すぐさま息子を連れて帰ってきた。
 その息子は幼いころ、電車にはねられて頭を強く打ち、体と心に傷を負ったが回復。養護学校を出て食品会社に就職。朝6時前に家を出て夜9時ごろ帰宅という生活を送っていたのにあっさりリストラされた。
「会社を守るにはこれしかなかった」と上司。途方にくれた母親は、生きる喜びを失った息子を見るにつけ、これから先、どうしてよいものかと悩む。相談されても手を差しのべることができない。
 こんなケースは、いくらでもあるのだろう。自殺者3万人台の数字が胸をよぎった。(岡)

★こうだったらいいのにな!

 (岡)さんのやさしい人柄が伝わってきます。
 しかし、「相談されても手を差しのべることができない」「自殺者3万人台の数字が胸をよぎった」とたそがれていても仕方がありません。新聞記者だからこそできること、新聞記事を書くことで状況を変えられるかも知れません。
 そこで提案。最後の段落を――

・企業、団体に対して障害者の法定雇用率が定められている。
・ところが、不況の中で達成せずに罰金を支払うことで済ませている企業が多い。
・社会的責務として法定雇用率の完全達成が求められる。
(・ちなみに、本社(中日新聞)は障害者雇用率○%で、法定雇用率を達成しているorしていない。)

民間企業の実雇用率は1.47%― 身体障害者及び知的障害者の雇用状況について ―@厚生労働省 ←必読!

 と書きかえてみてはいかがでしょうか? コラムではなく、まとまったレポートにもつながります。

★さらに深めると

 解雇された方がどのような雇用契約を結んでいたかわかりませんが、突然の通告による解雇は、「解雇権濫用禁止の法理」があてはまり、「解雇無効」となる可能性があります(労働基準法第18条の2)
 お母様は簡単に引き下がり、連れて帰るのではなく、しっかりと理由を聞く必要があります。また、1か月分の給与の請求ができる可能性があります(労働基準法第20条第1項)。

 短文のコラムでも、知恵と勇気を与えることができると信じています。

【参考】
労働基準法改定の留意点―「解雇権」明確化の必要@兵庫保険医新聞 2004年2月5日
 改定労基法は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」と改定。今後、使用者は、雇用契約締結時に雇用契約書(労働条件通知書)を書面で結び、「解雇事由も書面で明示」する必要があるとされ、解雇予告された職員は、「解雇の予告をされた日から退職の日までの間においても、解雇の理由についての証明書を請求できる」こととなった。


【参考条文】
 労働基準法第20条

(解雇の予告)第20条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。