支援費

【支援費】障害者支援費制度のピンチ

★1 朝日新聞2003年11月14日記事

 朝日新聞で、障害者支援費制度にかかる国の予算が実績に追いつかずパンクしそうだという記事が出ました。

記事はこちら↓
「障害者の在宅サービス利用急増、補助金不足の恐れ」
「障害者支援の補助金不足、省内予算で対応方針 厚労相」

★2 障害者支援費制度とは?

 2003年4月から、「戦後障害者福祉最大の革命」と鳴り物入りで始まった「障害者支援費制度」。
その趣旨は、厚生労働省自身が次のように語っています。

◇厚生労働省「支援費制度Q&A集」


※引用はじまり※
 支援費制度は、ノーマライゼーションの理念を実現するため、これまで、行政が「行政処分」として障害者サービスを決定してきた「措置制度」を改め、障害者がサービスを選択し、サービスの利用者とサービスを提供する施設・事業者とが対等の関係に立って、契約に基づきサービスを利用するという新たな制度(「支援費制度」)とするものである。
 支援費制度の下では、障害者がサービスを選択することができ、障害者の自己決定が尊重されるとともに、利用者と施設・事業者が直接かつ対等の関係に立つことにより、利用者本位のサービスが提供されるようになることが期待される。
※引用おわり※

 行政が「あなたはこの施設でこういう支援をうけなさい」と決めていた形から、障害者本人が自分のもっている「支援費」の範囲で、「自分に必要なサービスと事業者を選択できる」ように変わった。「措置から契約へ」とキャッチフレーズ的に語られることが多くあります。

★3 お金の流れを変え、本人が欲しいサービスを手に入れる
 この支援費制度には、これまで国が果たしてきた最大の福祉サービス提供者の役割を降りて、民間の事業者に任せていく――そのためのお金の流れを作る意味がありました。

 ところが、上記記事によると国(厚生労働省)は、「予想よりも支援費利用が増えたので、用意していた予算が足りなくなりました! あとは地方公共団体でよろしく!」と言っているという…。(坂口厚生労働大臣は、「省内で調整できるところは調整し、バックアップしていきたい」と語っているようだがどこまで対応できるかは不明です)

 せっかく始まって、サービス事業者も増えて、利用者も少しずつ慣れてきたというのに、これからは「お金がないからできません!」「今年のことは忘れてください!」になりかねません。

 昨年末の、「支援費サービスの上限設定問題」が再び浮上することは間違いありません。

一年前の状況についてはこちら
支援費・ホームヘルプサービス上限問題に関する新聞社説

戸枝陽基さん(NPOふわり理事長)コメント2003/01/29


 予算不足の問題は、支援費導入のときに既に予想されていたそうです。国が「利用はこんなもんだろう」と措置制度の時代の予算の2〜3割増しの想定ではじいた数字があまりにも低かった。現実に「もしも利用できるなら利用したい」という本人たちのニーズが見えていなかった。

 我が家でも、この10月から支援費利用を始めました。
「使い始めるまではためらいがあったが、使ってみたらとてもありがたく、必要なサービスだったことに気がついた」というのが実感です。

 来年度予算での増額を求めていかないといけません。

★追記――財源問題

 残念なことですが、現在の経済状況では「縮小するパイの取り合い」になりつつあります。「国(政治)は多様な利害をかかえた調整の場であるので、福祉にだけお金をいかせるわけにもいかない」それは理解できる部分もあります。
 現在の福祉予算の枠内で考えていくとしたら、ものすごく金を使っている「入所施設」から「地域」へお金の流れを変えていかなければなりません。支援費の問題は、「脱施設」と表裏一体の関係にあると思います。
 この問題についてはいつかまたお話したいと思います。