2004年09月02日

Q君のこと

■Q君のこと

 小学校、中学校の同級生に、「Q君」という男の子がいました。Q君はおとなしくていつも寂しそうな遠い目をしていました。質問には、独特のうわずった声で「質問の繰り返し」で答えていました。何度も質問すると「ワカンナイ」と言いました。

 小学生の頃、一番親しかった友人Xは、Q君になぜか「関心」があったようで、よく自分の家に誘っていました。Q君のお母さんは、友達ができたことを喜んでいました。

 小学校5年生だった頃、ある日Xが、「面白いものがあるから聞かせてやる」と言って、ラジカセを取り出してきました。テープを再生すると、XとQ君の声が聞こえてきました。
「いまなにがほしい?」とX。
「イマナニガホシクテ……ワカンナイ」と甲高く平板なQ君の声。
「わかんないじゃなくて、こたえて」
「ワカンナイジャナクテ……コタエテ」とやりとりが続きます。

 …

「Q君、クラスに好きな子とかいる?」とX。
「…………」
「こたえてよ!」
「…………ヤメテクレナイカ!」うわずった声でQ君が大きな声をだしました。
「やめるって何を?」
「イマナニガホシクテ、トカ……」さっきの抵抗の声に比べて、とても小さい声。

 そこで、録音は終わっていました。

 Xは、そのテープを私に聴かせて「どう? 面白いだろ?」と感想をもとめました。「Qってぜったいヘンだよ」と同意を求めます。

 私はショックを受けていました。やりとりそのものと、それをテープに録音した行為に、ひどく残酷なものを感じたのだと思います。胸が苦しかった。

***

 私は、その頃自閉症の「ジ」の字も知らず、Q君をただ変わった子だなと思っていただけでした。

 わが子の自閉症のことを知って、急にQ君の記憶が蘇ってきました。

 記憶の中に残るQ君は、中学の似合わない学生服を着て、ぼんやりと教室の窓の外を見ている姿です。卒業後の進路は知りません。

 Q君と私は同じ32歳。

 同じ長さの人生を生きて、きっとこの愛知県のどこかで暮らしています。彼が、元気でしあわせに日々を暮らしていることを願います。
 きっとどこかで再会するときが来るでしょう。

***

 微力だけど、わが子にとって良いことが、他の人にもよい影響が及ぶような、そんなことができたらいいといつも思っています。

 忘れないよ。

この記事へのトラックバックURL

http://app.blog.livedoor.jp/kaipapa2shin/tb.cgi/329042
この記事へのトラックバック
私が小学生の時、T君と言う「(恐らくは)知的障害を伴った自閉症」だった同級生がいた。今も私は同市内で暮らしてるが彼の消息は知れない。(トラックバックした)カイパパさん同様、幸せに暮らしている事を望んでいる。この思いは、長男スティッチと言う(多分)同様の障
遠いあの日、僕は彼を見殺しにした… by パパ【ぱんまりぴっぴ!!パパ・ママの日記】at 2004年09月14日 15:33
この記事へのコメント
私の実家の裏の家にも自閉症の子が住んでいます。
私より2つ下です。その子のお兄ちゃんに学校の帰りに私がからかわれていた時、幼なじみが私をかばおうとして「あんたの弟なんておかしいじゃん」と言いました。かばおうとしてくれたのは嬉しかったけど、その時のお兄ちゃんの顔は今でも覚えています。あとで幼なじみに謝りに行こうと誘いに行ったけど、行きたくないと言われて、一人で謝りに行きました。自分が口にした訳ではないけれど、絶対に謝らないといけないと思って。その子のお母さんは「謝りに来てくれてありがとう。」と言ってくれました。お兄ちゃんも私が悪いんじゃないと言ってくれました。うちの下2人もいつか同じような経験をする日が来るかもしれない。「あんたのお姉ちゃん変だね。」って。あのおにいちゃんの様に辛い、苦しい顔をして帰って来るのかも。その時、私はどうするのか、どう話してあげれるのか・・・。今よりも少しでもこころの大きな母になって包んであげれる
ようになりたいです。
Posted by ごんた at 2004年09月02日 12:07
そうです。

息子が自閉症だと分かり成長していく中で、ふと、古い記憶がよみがえります。

中学の時、同じクラスに2人自閉症(今思えば)の男の子がいました。
独り言をいい、電車が大好きで、教室から見えるJRの線路をいつも見ていたH君。
授業中突然顔を上げ、
小声で「9時55分○○発△△行き■■号」
すると、遠くから電車がやってくるのです。
大人しく、背が高く、割とハンサムな男の子でした。目立たなくてとぼけていてシャツが後ろからいつもはみ出していたけれど、
女の子からも男からも愛される存在でした。
もちろん、先生から何か説明があった訳でもなく、クラスの1人として、存在していました。

もう1人は、ちょっと声の甲高いR君。
手をいつもヒラヒラさせて、本のページを絶えずめくっていました。
彼もやはりみんなから愛されていました。

親友はいなくても、みんなから声をかけられる、目は合わさないけれどこちらへのアンテナは向けている・・・・・
騒々しくなく、決して他人の邪魔をせず、でも、みんな中にいつも存在していた。なんとなく癒し系の感じの2人でした。

彼らのように息子を育てたいと思っています。
Posted by ある母その1 at 2004年09月03日 08:57
ごんたさん、ある母その1さん、コメントありがとうございます。

Q君のことを思い出すとき、やっぱり胸が痛みます。
積極的にいじめたわけじゃなかったけれど、理解して関わったわけでもない。

20年前です。
Q君のご両親はどんな思いをもっていたのかな? とか思います。

それを考え出すと、「エッセイ風」に体よくまとめて発表することにどんな意味があるのか? なんてことも考えました。

でも、

お二人が書き込んでくださった思い出を読んで、記憶を呼び覚まして書くことは、やっぱり大切だと思えました。僕の記憶は特異なものじゃない。他の人にも響くことなんだ。

きっと、私たちは、これまでの人生の中で自閉症スペクトラムの人と関わっている。それは、電車の中で車掌さんのアナウンスを延々真似をする「車内に緊張感を走らせる」青年だったかもしれない。そのときは気がつかずに通り過ぎるのだけど、

「あの子がもしかしたら……」と想像することが、

うまく言えないけれど、すごく大切なつながりの糸口なのかもしれない、と思いました。
Posted by カイパパ at 2004年09月03日 13:58
初めまして。
いつも楽しく拝見させてもらってます。

「Q君のこと」
最初読んだとき、胸が痛むと同時に「どうしよう」って思いました。
その時発言させてもらおうと思いましたが、もう少し様子を見てみようと思い、経過をROMさせていただいていました。

・・・・ホッとしました。
なぜなら
>Q君のことを思い出すとき、やっぱり胸が痛みます。
>積極的にいじめたわけじゃなかったけれど、理解し>て関わったわけでもない
>「エッセイ風」に体よくまとめて発表することにど>んな意味があるのか? なんてことも考えました。

このような考えがあった上での記事だとわかったから・・。
私と同じ思いで、過去に出会った自閉ちゃんのことを思い出しているとわかったから・・。
そしてカイパパ様が、自分が決して正義の味方ではなかったという自覚の上で発言されていると感じ、とてもホッとしました。

そう若い頃、いえいえ本当につい最近まで、私自身も決して、自閉ちゃんに親切な人ではありませんでした。
将来授かる我が子が、同じ障がい(この言葉をあまり使いたくないのですが他にいい言葉がなかったので。不快に思われたらすみません)を抱えて生まれてくるとも知らずに。

我が子が自閉症と解った時から、私もちょくちょく思い出す少女がいます。
(もちろん、現在は少女ではないでしょうが)
どうしてるかな?あの時どうしてもっと理解してあげられなかったのだろう。

>うまく言えないけれど、すごく大切なつながりの糸口なのかもしれない、と思いました。
そうですね。って私も上手く言えないのですが・・でも私は今は自閉ちゃんにとって良い時代になってきているかな?とも感じます。
一般の考えと違うことがあっても、それはそれで良いじゃないかという風潮があるというか・・昔と比べて、障がい(ごめんなさいね)が=個性として受け入れられるようになって来ているかなあ・・と。
うっ・・でも、まだまだ偏見は多いかな?偏見と言うか「無理解」って感じですね。
Posted by パックン豆 at 2004年09月04日 11:47
同じような思い出をカイパパさんも持っておられて単純に嬉しいです(少し苦い記憶となってるところも共感します)。

「積極的にいじめたわけじゃなかったけれど、理解して関わったわけでもない。」_私もその通りでした。そして今、自閉症スペクトラムの息子を持った事で良くも悪くもあの記憶がよみがえる…。

障害児の親になったなら誰しも、その記憶が古傷のように疼いて痛むんじゃないでしょうか?

ただ私の通った小・中学校では壮絶なイジメが存在していて(生徒同士だけでなく、先生に対しても)、自分でもなぜあの時いじめも、いじめられもせず世渡りして行けたのか不思議です。そして、いじめに合う(恐らく)自閉症の同級生を同調もせず傍観し続けれたのかも…

そんな環境も予想されるんで、就学時期にはまた思い悩む日々が続きそうです。
Posted by ぱんまりパパ at 2004年09月14日 14:50
自分の体験では、ありませんが、りゅうママのクラスにも、自閉症の可愛い男の子がいて、今でも、良く思い出すそうです。
その子は、漢字が得意で『漢字博士』として、皆の尊敬を集めていて、なにげにクラスの一員としての確固たる地位を築いていたそうです。
そして、他のクラスの子や同じクラスの子に、いじめられそうになると、誰かが守ってあげたりしてたそうです。
時代は違いますが、悪い話 ばかりじゃ無いです。
Posted by タロ吉 at 2004年09月15日 10:07
私の知り合いの子供さんも自閉症です。
その事を聞いたとき、正直言ってとまどいました。
今後どのように付き合っていったらいいのかわからなかったからです。でも、このサイトを見て、
少し安心しました。みんなから愛されていた子供さんのことを、しったからです。
そして、私は、今までと変わりなくこの知り合いの
子供さんの成長を見守り続けたいと思いました。
ありがとう。

Posted by momo at 2007年03月20日 20:23