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【本】自閉症スペクトル〜最初の一冊

★1 はじめに

 カテゴリー「自閉症スペクトラム」では、しばらくの間、自閉症を学ぶための
書籍・映画などを紹介していきます。

 まず第一弾は、これ以外にないでしょう。自閉症を学ぶ際の、教科書だと思っ
ています。

★2 『自閉症スペクトル 親と専門家のためのガイドブック』

『自閉症スペクトル 親と専門家のためのガイドブック』
ローナ・ウィング 著
東京書籍 2,400円

(1)著者について
 ウィングさんは、イギリスで1970年代の初めから自閉症研究の第一人者として
活躍されています。そして、自閉症の娘をもつ母親でもあります。

(2)私とこの本との出会い
 私は、カイの障害の診断を受けた頃、様々な本やインターネットの情報を読み
漁りました。その頃の私は、心にまったく余裕がなくて、親以外の専門家の書い
たものが、冷たくて、読んでいるうちに苦しくなってきて、読めませんでした。
 そんなときにダダ父通信で紹介されていた『自閉症スペクトル』と出会いまし
た。
 専門家が書いているのに、なぜこんなにあたたかく伝わるのか?――前書き
にある日本で自閉症の子どもと出会った時のエピソードから最後まで――不思議
なほど素直な気持ちで読めました。
 あとで「ウィングさんは母親でもある」ことを知って大いに納得しました。

(3)内容
 この本は、自閉症研究の到達点とイギリスの現状を、正確で中立的に説明して
います。ウィングさん自身の言葉で要約すると――

引用はじまり(同書p.324より)
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成人になったときの状態は、児童期の能力と密接に関連する。しかし、どのよう
なレベルであっても、教育を通して、生活の質を改善することができる。
自閉症スペクトル障害は、脳の一部の生物学的異常による発達障害である。
複雑な遺伝的要因は原因として重要ではあるが、しかし自閉症に導きうる他の身
体的原因もある。それらを合わせて、自閉症障害の全てのレベルの人の出現率は、
おそらく1000人に約9人である。多くの方法が開発されても未だ治癒はない。
しかし今では、教育の方法、まだどのようにしてスキルを増やし障害や問題とな
る行動を軽減するか、環境と日々のプログラムをどのように構造化するかについ
ての多くの知識が蓄積されている。
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引用終わり

 この要約で述べられている一つ一つの意味・根拠が本書で解説されています。
すごいと思う点は、ライフステージごと、本人、家族、専門家全て、さらに利用
できる社会資源について、幅広く目配りされ簡潔明瞭な解説がなされている点で
す。

 そして、この本が解説するイギリスの状況は、日本には足りない支援サービス
の目標となるものです。「イギリスはいいなあ。じゃあ、私たちの住むところに
は何が必要なんだろう?」と考えるヒントになります。

★3 最初の1冊にしてほしい
 この本は、難しそうで少し高めなので、他の薄い入門書を手に取りがちですが、
けっきょくは遠回りになる場合があります。

 最初の1冊にぜひどうぞ!