■特別支援教育に関する国の施策リンク集

 昨日の記事で、自閉症に対する総合的な政策への取り組みが始まったことを紹介しました。

・自閉症などの早期発見や支援、政府・与党が総合対策を検討
http://kaipapa.livedoor.biz/archives/371264.html
 自閉症スペクトラムの子どもをもつ親たちにとっては、知的障害を認めてもらえない、高機能自閉症やアスペルガー症候群の存在は常識化していました。
「対策が遅すぎる」という声もあります。が、ここで「なぜ今、政府が思い腰を上げたのか?」を考えておく意味があります。
 私は、文部科学省が実施した2002年に実施した実態調査の効果だと考えます。

 どうして今大きく動き始めたのか? 私は「文部科学省の実態調査がターニングポイントになっている」と解説しました。
 しかし、実態調査は突然思いつきで実施されたわけではありません。「どのような流れで、政策を動かしてきたのか」について、文部科学省の動きをまとめてみました。


★はじまりは世紀の変わり目にあった

・(1)21世紀の特殊教育の在り方について(最終報告)2001/01 答申
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/006/toushin/010102.htm
 21世紀の特殊教育の在り方に関する調査研究協力者会議が答申したもの。 ここから始まった。

・(2)特別支援教育の在り方に関する調査研究について (2001年10月から2003年3月)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/018/toushin/030301m.htm

 (1)を受けて、専門家による調査研究が行われた。

・(3)「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査」調査結果 (2002年2月から3月にかけて実施)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/018/toushin/030301i.htm

 (2)の調査研究の一環として、実態調査を実施。通常学級で要支援の子どもの存在が数字的に把握された。

・(4)今後の特別支援教育の在り方について(最終報告) 2003年3月←極めて重要!
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/018/toushin/030301.htm

 特別支援教育の在り方に関する調査研究の成果を答申した最終報告。これからの教育施策の方針となる。

・(5)小・中学校におけるLD(学習障害),ADHD(注意欠陥/多動性障害),高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)の公表について
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/16/01/04013002.htm
1 策定の背景及び趣旨
平成15年3月の「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」において,「小・中学校においてLD,ADHD,高機能自閉症の児童生徒への教育的支援を行うための総合的な体制を早急に確立することが必要」と提言された。
また,平成14年12月24日に閣議決定された「障害者基本計画」に基づき決定された「重点施策実施5か年計画」においては,「小・中学校における学習障害(LD),注意欠陥/多動性障害(ADHD)等の児童生徒への教育支援を行う体制を整備するためのガイドラインを平成16年度までに策定する」ことが提示された。
これらを受け,平成15年8月から本ガイドラインの策定に着手し検討を進め,このたび,試案としてとりまとめ公表することとした。
本ガイドライン(試案)は,各教育委員会や学校等において,小・中学校におけるLD,ADHD,高機能自閉症の児童生徒への教育的支援を行うための総合的な体制を整備する際に活用されることを目的として作成したものである。

 ポイントは、文部科学省(教育)と厚生労働省(障害者基本計画)とがリンクして動いていることです。縦割り行政の弊害から脱却しようとしていることが、「策定の背景」から読み取れます。

★カイパパの感想

 特殊教育から特別支援教育への制度変更に向けた文部科学省の準備は着々と進んでいるように見える。官僚の「取り回し」は、見事です。ビジョン策定から審議会への専門家の取り込み、現場での調査とフィードバック――政策立案の教科書に取り上げられそうなスマートさです。
 しかし、教育現場での「特殊教育から特別支援教育へ」のシフトの認知度は低く、親が教員に質問をしても明確な答えが返ってこないようです。関係者の不安は高まっています。
 教育は「人が命」です。トップからの号令ですべてが変わると思うのは、安易過ぎます。方向性、具体像をもっとわかりやすく説明し、現場と親の意見をきちんと聞くべきだと考えます。


【参考となるサイト】

 と、ここまでまとめてきて、「わお! こんなところに、特別支援教育のポータルサイトが!」と発見しました。みなさんは、下記の「障害のある子どもの教育の広場」をぜひブックマークしてご活用ください。

・(6)国立特殊教育総合研究所
http://www.nise.go.jp/
 研究の担い手です。
「特別支援教育の進展と小中学校に在籍する特別な配慮を必要とする児童生徒の支援体制の整備に関する実態調査」を開始しているそうです。現場と政策とのギャップが明らかになると予想しています。報告を待ちましょう。

・(7)国立特殊教育総合研究所:障害のある子どもの教育の広場>特別支援教育について
http://www.nise.go.jp/portal/tokubetusien/index.html
 私がこの記事でまとめたリンクがコンパクトに整理されています。
 
・同じく>学習指導に役立つ情報>研究所web「教育コンテンツ」>研究所web「教育コンテンツ」
http://kids.gakken.co.jp/campus/academy/nise2/index.htm

 子どもたちがたのしめる(?)教材ゲームが掲載されています。

【障害者白書の教育関連する記述】

・(8)平成15年版 障害者白書(厚生労働省)
http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h15zenbun/h15_index.html

・第1編 > 第1章 > 第2節 > 2 障害者基本計画:重点施策実施5か年計画の概

http://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h15zenbun/html/column/col01_01_02_02_01.html
6 教育・育成

(1)一貫した相談支援体制の整備
a.. (略)
b.. 小・中学校が学習障害(LD),注意欠陥/多動性障害(ADHD)等の児童生徒へ教育支援を行う体制整備のためのガイドラインを平成16年度までに策定 等


 自閉症スペクトラムの人がしあわせに暮らしていくためには、生涯にわたる一貫したサポートが必要です。日本でも、これまでの先輩たちの必死の取り組みが、実を結ぼうとしています。私も、できることで貢献したいと思います。