■サイトを閉じる時〜私の心がまえ

★はじめに

 4月23日の記事「胸が痛む」へのコメントの中で、
私は、水銀原因説のレポートを書いたときに、サイト閉鎖も覚悟して書きました。

と書いたことについて、大阪・PONTAさんから苦言をいただきました。
http://kaipapa.livedoor.biz/archives/436060.html#comments
しかしながら「サイトの閉鎖を覚悟」というのは私にとっては違和感が有ります。
自分の論点が正しいと御思いでそれを書いたのであるのならば、
「どんなに誹謗中傷を受けても俺は自説を曲げない。サイトを閉鎖したり、コンテンツを取り下げる事も無い。」
までの覚悟を持つべきです。
「自分の正しい(と思っている)意見を言いながら、反論に負けてしまってサイトを閉鎖する」のは
「私の意見が間違っていました」と行っているような物ではないでしょうか?
「それならば最初から言わない方が良い」と思ってしまう私は「すれた」のかなぁ・・・。

 せっかくの機会をいただきましたので、PONTAさんの苦言にお答えするかたちで、私の発言の真意をお話します。
★1 サイトの目的

 カイパパ通信blog☆自閉症スペクタクルは、「自閉症から広がる、チャレンジに満ちた新しい世界」を紹介して、勇気と知恵を与え合うことを目的としています。サイトを通じて、家族が少しでも楽になって、理解者やサポーターが1人でも増えて、「自閉症でOK!」の地域が耕されていき、その結果、本人(たち)の笑顔が増えることを目指しています。

 アプローチに様々な違いがあったとしても、本人のためを考え実践をする親や支援者は、「みんな仲間だ」「手をつなげる存在だ」という基本的な信頼感をもってサイトを運営しています。

★2 「正しさ」に対する揺れ

 私は、記事を書く際に「自分の記事や主張がすべて正しい」という確信を持って発表しているわけではありません。

 できるだけ慎重を期して、調査・理解し、わかる範囲で書いていますが、それでも勘違いや間違いを犯す不安はあります。記事をエントリした時点で、すべてのリアクションや自分自身の主張の「穴」を予想することはできません。
 もちろん、ミステイクがあれば、サイトは閉鎖せず、同じサイトで訂正や補足をするべきだと考えています。

 しかしながら、水銀原因説について記事を書く際には、以上のこととは別に、特別の覚悟が必要でした。その理由は、

(1)療育のやり方は、生き方の根幹に関わる、非常にデリケートな話題であるから
(2)万が一、記事を読んで「攻撃された」と感じる人から、実生活に影響するリアクションがあった場合のおそれがあったから

 です。

★3 療育のやり方は、生き方の根幹に関わること

 わが子をどう育てていくかは、親の生き方の根幹に関わることです。2004年3月11日の記事でこう書きました。

・カイパパ通信blog☆自閉症スペクタクル:【水銀原因説?】体質の問題?
http://kaipapa.livedoor.biz/archives/214800.html
★親のしんどさ
 私たちは、学説で食べている研究者ではありません。
 親として、「どう行動するか?」を日々判断を迫られ、選択して生きています。どんな情報でも、無関係な傍観者ではいられません。自分なりの判断と行動が求められるから…
 その意味で、親は、とってもシンドイ。判断の質も問われ、結果の責任も取らなければいけないから……。
 私は、キレーション療法に必死で取り組む親の方を批判する気持ちにはなれません。
 私も親だから。

 私は、「科学的に証明されたわけでもない療法に取り組む親はナンセンスだ」みたいな発言に出会うと強い憤りを感じます。
 あるお父さんが「この子が治るという水がどこかにあると聞けば、それがどんな外国の山奥だとしても自分は汲みに行く」と書き込まれていました。胸を衝かれました。「ナンセンスだ」と批判される方に、この切実な思いがわかるのでしょうか。
 私たちにとって、自閉症に関する全ての情報は他人事ではありません。自分なりに判断をして、毎日の生活をしていかなければなりません。

 だから、療育や療法について発言する際に、いいかげんな気持ちでのぞんではいけないと考えています(それは、施設入所や地域生活支援に関する議論についても同じです)。みんな、それぞれの事情で最善を尽くしているからです。

 水銀原因説に関するレポートを書こうと決めたのは、自分が2年前に「水銀原因説」について初めて知って、ひどく混乱し抑うつ的な気持ちに追い込まれた経験があったからです。そして、TBS報道特集の番組構成は、一方的だと感じました。
 放送を見て、自分を責めて、いてもたってもいられない気持ちになっている親たちの姿が目に浮かびました。
 私は特別な情報を持っているわけではないけれど、自分なりに学んだことはある。それをシェアしたいと思いました。

★4 慎重を期しても、リアクションは予想しきれない…

 私は、「こっちが絶対に正しい」と主張するのではなく「冷静になって考える素材を提供する」意図で記事を書きました。
 それでも、受け止める立場によっては気持ちを傷つけられ、許せないと思う内容である可能性があります。
「あなたの生き方を非難・攻撃するつもりはない」と慎重に書いたとしても、相手のとらえかたまで決定することはできないから。

 あの時点で私はもしかしたら過剰なリアクションが返ってくることをおそれました(実際には起きませんでしたが)。

 私が、最初の記事(3月9日)を書いたときに想定していた事態――

(1)議論とは別の次元で、自分が相手の「憎しみ」の対象となり、サイトに対してストーキングやスパム行為を仕掛けられる。
(2)実名や電話番号、職場などを晒され、いやがらせを受ける
(3)妻や子どもが危険を受ける

 (2)について説明します。
 私は公の場で、実名で講演などを行ったりしています。Web上の「カイパパ」と現実の私を結びつけることはそれほど困難なことではありません。少なくとも、愛知に住む自閉症関係の人たちが、私の存在をサーチしようと思ったら、すぐに見つけられることでしょう。
 その意味で、私は自分の「匿名性」が確保されているとは感じていません。それどころか、発言が関係各方面から「ウォッチ」されていると感じることがあります。

 そういった状況で、デリケートで論争的なテーマに飛び込んでいくということは、ストレスがありました。(当時、パートナーブログのTamagoさんに、カイパパ通信blog☆自閉症スペクタクルのサイト監視のお願いもしていました。Tamagoさん、その節は支えてくれてありがとう)

 一連のレポートの後、疲れとストレスから、私は体調を崩しました(恐れていた事態が起こらず、ほっとした安心感もあったのでしょう)。

 PONTAさんは、
「どんなに誹謗中傷を受けても俺は自説を曲げない。サイトを閉鎖したり、コンテンツを取り下げる事も無い。」までの覚悟を持つべきです。

 とおっしゃいましたが、私は、私なりの覚悟をもっています。最悪の事態も想定した上で、

書くにあたって、
・(主張が正しくても)自分の身を守るために、いつでも撤退の準備と心がまえはしておく――

 ことが大事だと思いました。
 最悪の想像が現実になったとき、サイトを閉鎖する・しないを決めるためのジャッジをする際に、

・自分の意見が正しいかどうか or 論争に勝利したか否か

 は関係がないと思っています。「自分の意見が正しい」と信じていても、「逃げるが勝ち」という場合がある。

 私は、強い人間ではありません。また、サイトでの主張に全てを賭けているわけではありません。
 個人サイトである、ということは、「自分の責任の取れる範囲で、身の丈にあった行動(進退も含めて)判断ができる」という意味だと思っています。

★4 まとめ〜輝かしい15年後のために☆

 長々と書いてきましたが、まとめます。
 
・勝ち負けやメンツにはこだわらない
・一番大切なものは何か(特に実生活への波及のリスク)をいつも考える
 ことにしています。

 自分のことは、自分で決める。しかし、他人のリアクションは決めることができない。

 ★1で確認したとおり、私のサイトは、自閉症に関わる人々と勇気と知恵を与え合う場となることを目的としています。
 もしもその目的が果たせない事態が生じたら、リセットすればいいと思っています。

 人生は長い!
 私には「15年後の輝かしい未来」という目標があります。
 カイパパ通信blog☆自閉症スペクタクルは「カイとそのお友だちが安心してしあわせに暮らせる地域づくり」の手段のひとつですが、唯一の手段ではありません。
 その目標達成に役立つかぎりは続けますが、負担や逆効果になるようなら、やり方を変えます。予想変更あり!です。悲壮感や敗北感を感じる必要なんてないんです。


【関連記事】
・(1)【TBS報道特集】自閉症=水銀原因説を論じる
・(2)【水銀原因説?】親の気持ち

【謝辞】
 貴重な機会をくださったPONTAさん、GK68さんに感謝です。
 私はいつも解散を予定して物事を始めるようにしています。でも、このサイトは、そう簡単にはつぶさないつもりです。いつも順風の状況ばかりではない、「やめるときはやめるんだ!」と決めておくことで、逆に腹が座るようなところがあります(^^)
 今後とも、アドバイスをよろしくお願いします。


【追記】
★匿名性について

 私は自分の「匿名性」が確保されていないことを、悪いことだとは思っていません。
 自分の住む町で、自閉症でOK!の地域づくりを進めるために、匿名性を脱ぎ捨てる必要があります。サイトに自分たちの顔写真を載せているのも意図的です。親の会やTEACCHプログラム研究会でみんなの前に実名で顔を出すことにためらいはありません。また、家族や友人、職場関係の人たちも私のサイトの存在を知っています。
「ネットだから言いっ放し!」ということは私には許されていません。
 サイトでの発言と実生活での行動とが矛盾しないように心がけています。
 けっこうシンドイです(^^;
 でも「輝かしい☆15年後」に近づくため、戦略的に選んだことですので、このまま前に進みます。