■【講演報告】たいへんだけど、Life goes on!

 10月29日(日)に、就学前の知的障害児通園施設で、お父さん対象にお話をしてきました。この日は、園の「父兄参観日」で、午前中は、子どもたちの園での様子を見学して、午後に講演を聞く流れでした。私はこの講演のパートを依頼されました。

 当初考えていた構成は、「私の体験」をお話しした後、発達障害者支援法や障害者自立支援法の制定、学校教育法の改正など「取り巻く状況の変化」の説明をする予定で資料も作っていました。が、「Yes」の記事でも書いたように、考え直して、今回の目的を「同じ(似た)体験をした人と、思いを共有する」ことに定めました。

★構成

 タイトルは、「たいへんだけど、Life goes on! 〜5年前の「自分」に伝えたいこと〜」。

 こんな構成にしました。
(1)「私の体験」を共有
 ⇒父親として、ほんのちょっぴり先に体験をしただけですが、何かのヒントにしていただければ
 約7割の方が自閉症、3割は別の障害のお子さんをお持ちでしたので、自閉症に特化した話にならないようにしました。

(2)「はじめの一歩」を踏み出す
 ⇒まずは「はじめまして」。自分と似た体験をした人と話をしてみましょう。

 前半で、私(カイパパ)の障害がわかるまでと分かってからどう受け止めたか、その後何をしてきたかを45分間でお話しました。
 後半では、5人ずつのグループに分かれていただき、一人ひとりが共通の質問項目に答えるかたちで、思いを共有しあうセッションにしました。

 なぜ、この構成にしたかと言うと、カイが通園施設に通っていた当時を思い出してみたんです――父親どうしが話をしあう場はほとんど存在せず、同じ園に通っていても父親どうしが親しくなる機会はなかなかありませんでした。お互いを知り合う機会にすること、そして子どもの障害がわかって時間が経っていない揺れる思いをシェアしあうことは、きっとプラスになるだろうと思い、場づくりをしました。

★「体験をシェアする」

 質問項目は、これです。
(1)お名前
(2)お子さんのお名前・年齢
(3)障害の種類
(4)わかったのはいつでしたか?
(5)その時どう感じましたか?
(6)今の思いは?
(7)今、気がかりなことは何ですか?

 ごくシンプルな項目ですが、とても「深いところ」に触れる内容になっています。いきなり集められて「さあ、この項目について話しなさい」と言われても、普通は難しいと思います。
 ですが、前半で、カイパパが、当時の思いを追体験するかたちで話し、全員がそれを聞いている状態でセッションに入っているので、本音の、深い話ができていたように思いました。

 あるお父さんが、「こんなに似た体験をした人がいるとは、驚きました」とアンケートに書いてくださっていましたが、これなんですよね。私たちは、「自分だけに降りかかった〈不幸〉」だととらえて、孤独感を覚えてしまう。でも、自分だけじゃないんだよ、と知ること。これは支えになります。
 ある方は、「話せてよかった。職場では、できない話ですものね」と書いておられました。仕事では、何事もないかのように社会生活を営んでいて、家庭で起こっている「非日常」(だんだんと日常に変わっていくのですが)とのギャップ――私もいつも感じていました。

 みなさんが、話しているうちに、だんだんと表情が明るくなってくる様子がとてもうれしかったです。

★アンケート結果

 私は毎回必ずアンケートをとることにしているのですが、その理由は、自分に厳しくなりすぎないように。甘やかさないように」するためです。

 講演の最中、参加されている方々の表情は意外なほどよく見えます。しかし、その表情だけを手がかりに講演を評価すると間違えます。たとえば、講演中ずっと目をつぶっていて、私は「あの人は寝ていたな」と思っていた人が、アンケートで「ずっと涙がこぼれそうで、目をつむっていました」なんてことを書いてくださることがありました。
 アンケートで、目に見えない「思い」を「視える化」しないと、講演者の一方的な思い込みで評価を決めてしまうことになるので、必ず直接の声を書いてもらうようにしています。

 今回の結果ですが――

【アンケート結果】

「今日参加してよかったと思いますか?」の質問
 ・5……60.9%(14名)
 ・4……21.7%( 5名)
 ・3…… 8.7%( 2名)
 ・2……   0%( 0名)
 ・1…… 4.3%( 1名)
 ・無回答…4.3%( 1名)
「5」と「4」の肯定的評価が、8割を超えています。自由回答の欄に、「語り合えたのがよかった」という声が多くて、目的は達成できたかなと思いました。

 参加してくださった皆さん、呼んでくださった皆さん、どうもありがとうございました。先は長いですが、「旅は道連れ 世は情け」で一緒に歩んでいきましょうね。