ベムさんから過去記事【記事】乱れた睡眠、幼児の脳発達に悪影響?…5歳児調査にTrackbackをいただきました。

・愛知県:乳幼児期の規則正しい睡眠のリズムが脳機能の正常な発達に重要であることを実験的に証明しました
http://www.pref.aichi.jp/0000042725.html
心身障害者コロニー発達障害研究所では、乳幼児期の不規則な睡眠のリズムが脳のネートワーク(シナプス)形成を促進する蛋白質(脳由来神経栄養因子)の日内リズムを乱し、シナプス形成不全を引き起こすことを動物実験で明らかにしました。また、自閉症モデルマウスでも同様の脳機能障害を解明しました。
この結果は、不規則な睡眠のリズムが自閉症様の症状を引き起こす可能性があること、そして、乳幼児期に早寝早起きの規則正しい生活をすることが脳の発達に大切なことを実験的に示した世界初の発表で、このたび、国際的学術専門誌に評価されました。

この研究の発表について、Facebookでも話題になって、私が書いたことを載せておきます。

うちの子は、睡眠障害が本当に激しかったです。寝なかった。すぐにリズムが崩れた。
脳の機能障害が原因で、睡眠障害が結果だと思います。
「眠れない」ことが、さらに脳の発達に悪影響を与えていることは、そのとおりだと思いますが。

「A:自閉症の原因(=影響を与える)遺伝子あるいは素因が特定された」
「B:しかしながら、その遺伝子で説明できる自閉症は◯分の1である。」
「C:自閉症スペクトラムという症候群を惹き起こす原因は、種々あり、複雑に作用しあっている。」

どうしても、Aばかりがフィーチャーされて吹聴されてしまう。そのため誤解が生じて、多くの人を傷つける影響が生じる。
Aの解明自体は悪いことではないのだが、「新発見」があるたびに、感情的に構えてしまいますね。
BとCのことを、必ず、添えて欲しいです。

今回の、愛知県コロニーの研究成果は、睡眠リズムに関するもので、親が操作可能(?)なものを指さして、「原因だ」と述べるもの。じゃあ、うちの子を、なんとかして寝かせることが出来ていたら自閉症は「治っていたの?」と、やっぱり思いますし、「睡眠が原因じゃない。結果だろう」と思います。

と同時に、うちの子の場合、低身長症の治療のため、成長ホルモン注射をするようになってから、睡眠時間が伸びました。身体の発育とともに、脳も発達しているのかな?と思うことはあります。
(成長ホルモンも全然足りていなかったから、ものすごく不利な条件で、成長をしようとしてきたんだよね、と思う。「ごめんね」と思う。)

うちの子のことしか、わからないけれど。(成長ホルモンを補うことが他のお子さんの睡眠障害が改善するかどうかはわかりません)
睡眠は大事。本当にそのとおり。
本人のためにも、親の健康のためにも。緩解させる方法が見つかるといいです。その方法を見つける研究をぜひ進めて欲しい。

このコメントを書いたあとに、妻にこの研究の話をしたら、「マウスに自閉症がいるの?」と訊かれました。もっともな疑問。

「実験用に作ったんだって」と私が言うと、
「まずそこが気に食わない」と言う。

「ヒトとマウスじゃちがうからね」と私。
「っていうより、マウスは最初から多動でしょ」

あ、そこか…!

──以上は、カイパパの感想に過ぎないのですが、ベムさんの考察はぜひ読んでいただきたいです。

・ベムのメモ帳Z:自閉症に関する科学報道について
http://d.hatena.ne.jp/bem21st/20110705/p1
自閉症マウスについても、触れられています。
まず、自閉症モデルマウスが本当に自閉症のマウスなのかという疑問がありますね。自閉症モデルマウスというのは遺伝子を操作するなどして作り出すのですが、現在、自閉症の原因となる遺伝子はしっかりと同定されているわけではないでしょう。だからやや無理をして作ったうえで、その行動が人の自閉症に似ている(例えば鳴き方の発達の遅れをコミュニケーション障害などと「診断」しているようです)からということで自閉症と見なしているのではないかという想像がはたらきます。



次に、仮に自閉症モデルマウスが本当に自閉症だと認めた場合であっても、それを使って確認できたことは、人の自閉症にもそのまま当てはめられるのかという疑問があります。このことは自閉症に限らず他の病態モデル動物全体にも言えることですが、当然限界が指摘されています。私が説明するよりもこちらのブログをご覧いただいたほうが説得力があるでしょう。

■病態モデル動物の限界。-薬作り職人のブログ
http://kentapb.blog27.fc2.com/blog-entry-1923.html


lessorさんのこの記事もあわせてどうぞ。(強調部分はカイパパが装飾)

・「睡眠リズムは脳に大切」で終わらせたくない人たち - lessorの日記
http://d.hatena.ne.jp/lessor/20110706/1309960100
そもそも記者発表資料を見る限り、この研究結果から「睡眠の乱れが原因で自閉症になる可能性」を読み取るのは、かなり無理があるように思う。

前提 普通のラットの睡眠のリズムを乱すと、脳由来神経栄養因子(BDNF)濃度に見られるはずの日内リズムが乱れ、シナプスが減る。

前提 人間でいう自閉症っぽい行動を示すモデルマウスではBDNF濃度にリズムがない。

結論 (人間の)睡眠リズムの乱れは自閉症の原因になる。

 こんな飛躍の多い、雑な論法は成立しない。実際、研究者による記者発表資料でも書かれているのは、

1)自閉症児のBDNFの日内リズムを人為的に正常に近づけることで症状の改善に繋がる可能性、
2)自閉症児の睡眠バランスを薬物療法で改善することで臨床症状を緩和できる可能性

であり、これらは睡眠の乱れと自閉症「発症」との因果性について何も主張していない。自閉症児の「症状」改善にとって睡眠リズムが大事という話である。「原因(睡眠の乱れ)」→「結果(自閉症)」という時間的な前後関係を示そうとしたようにも見えない(論文全文を読まなければわからない部分もあるけれど)。
ひとくちに「睡眠障害」と言うけれど、その程度も様々です。
ただその苦しみは──誰かが「地獄」と表現していたけれど。想像してみてください。生まれたばかりの赤ちゃんは昼も夜もなく短時間で目を覚まし、親が睡眠不足でつらい時期がありますよね。それが延々と何年も続き、終わりが見えない状況を……。親は健康を崩します。精神面も追い詰められます。

だから、私は、睡眠障害を軽減する方法を見つけて欲しいと切に願います。

「寝かさないから、自閉症になった」かのような口ぶりで、今苦しんでいる親や過去を後悔してしまう親を叩くのではなく。