大震災 自閉っこ家族のサバイバル
大震災 自閉っこ家族のサバイバル
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読みました。

手元に持ってはいたのですが、なかなか開くことができず置いていました。

ところが、ここ数日のうちに、2人の方(親の立場ではない)から
「大地震の本読みましたか? あれは素晴らしいです」と声をかけられ
「自分は、震災の凄まじさをこの本でようやく知りました」
「これは、自閉症の関係者だけが読むのはもったいないですね」とまで言われ、
読まねば!と決心しました。おおげさですが、震災の、しかも自閉っこ家族の実話を読むことは、私にとっては勇気のいることでした。

ちょうど、おかざき福祉まつりに行こうと決め、こうままさんたちのブースでは『大震災 自閉っこ家族のサバイバル』のチラシを置いて宣伝をすると言っています。よしっ、これはめぐりあわせだ。行き帰りの道中に読むのだ!

本の構成は、
前半の2章は、仙台市内で被災した高橋みかわさんにフォーカスしています。
「第1章 ライフラインのとまった街で」は、みかわさん家族のサバイバルについて。
「第2章 ブログとメールでつながりあった」は、みかわさんが震災後に発信を続け仲間たちを支えた「みかわ屋通信」について。

みかわさんの論理的な支援の組み立てなおし方(トイレ、お風呂がダメ。こだわりのある子が混乱しないようにするには、、、とすぐに代替案を具体的に準備する)は、驚異でした。

高橋みかわさんは、実は『重い自閉症のサポートブック』の著者です。「模倣をしない/できない」自閉症の子どもの子育てに長年取り組んできて、誰よりも、本人の特性を観察し毎日支援を組み立て続けてきたからこそ、緊急時でも対応ができたのですね。

そして、自分や家族のことだけではなく、周りのひとたちに対しても惜しみなく注ぐ「情け」(ここはあえて「情け」という言葉を使いたい)の豊かさ。
こういう人が強くて、本当の優しさをもつ人なんだなと。本から伝わってくるものがありました。
電車で読んでいて、なんども熱いものがこみ上げてきて、ぐっと奥歯をかみしめて耐えました。(たぶん前に座っていた女子高生はこわかったかも…)

後半は、石巻編。

4つの家族の話が語られます。被害が甚大だった石巻では、まず1日1日を乗り切ることで必死です。
情報が不足していて、広範囲で未曾有の被害が起きていることを知らない状態で、何が起こったのかわからなくても、自閉の子を見つけ出し、引き取って、家族で(母親が)なんとかサバイバルする。

みかわさんが書いています。
有事の時、お父さんは社会というコミュニティーに取られる。でも、そうだからこそ社会の機能が回復し、まわり始め、日常に向かって動きだす。
……わかってはいるけれど、あらためてその現実を突き付けられた。
子ども、家庭のことは、お母さんがどんと引き受けるしかない現実……

父親として、考えなくてはいけません。

「第4章 地域の避難所で」は、地域の避難所で過ごした自閉っこ家族が語られます。

ここで、最初は体育館で避難をしているのですが、そこにはいられなくなり、美術室などの教室に移動をさせてもらうのですね。この対応がしてもらえたから、避難所で長期間生活をすることができたのではないでしょうか。

体育館で大勢の人に囲まれて過ごすカオスの状況では、自閉症の人は追い詰められて、パニック、自傷、他害の危険性が非常に高くなります。周りの人にも強いストレスを与え、お互いにとってまずい状況になる。このスペシャルニーズに対して、教室を開放してくれたことが、避難所生活を可能にしたのだと思いました。

私たちは、カイが避難所で暮らせるとは思っていません。自宅でなんとか暮らそうとするでしょう。自宅がダメな場合は、、、被災していない地域に避難をするしかないと考えていますが、移動の手段がない場合には、数日間から数週間は避難所で過ごすことになります。教室に分けて入れてもらえたなら……なんとかなるかもしれません。

そんなことを考えながら読み進むと、石巻支援学校のお話が最後に出てきました。(よく考えられた構成)

「学校は地域のものだから、地域が必要としているときは地域に返す」という校長先生の方針に感銘を受けました。この基本方針が揺るがなかったから、腰の座った支援が実行されたのだと思います。

そして、あとがき。このコンパクトなまとめが、また素晴らしい。立ち読みでもいいから、この「おわりに」の5ページを読んでいただきたい。ぼくは、人が生き抜く力を感じました。
全文引用したいぐらいすごい文章なのですが、一番好きな部分だけ紹介。
●自閉っこが持っている『生きる力』

非常事態を察知して誰に言われるのでもなく自分からやり遂げています。
まさに究極の自己調整、適応力を発揮しています。

これこそが、彼らが本来持っている『生きる力』なのではないでしょうか。
では、そんな立派な力を持っているなら、何があっても大丈夫でしょうか。
いいえ、それは違うような気がします。
あのとき、自閉っこはとても辛かった。でも、そうするしかなかった……
できるなら、平和な環境で、自閉っこの持っている『生きる力』を
発揮できるようにしてあげたい……心の底からそう思います。

なんて言うんだろう。

人生は困難の連続ではあっても、泥沼のなかからでも、何かをひろいあげることができる。
そして、見つけた何かは、明日につながる可能性。
でも、その何かを磨いて、よく観て、真価を見抜く力が要る。
その力は、「信じること」なんじゃないかな。

本当に貴重な本です。まだのかたは、ぜひ。



<告知!>
NHK名古屋で、2011年9月30日「おはよう東海」で、朝7時45分頃から6分間くらい、東海大地震が来た場合の備えについての特集(だと思う)で、自閉症の子をもつご家族と高橋みかわさんが登場します。
「おはよう東海」が見られるかたは、ぜひチェックを!