■安心して任せられることの保証は?

支援者と親の間に流れる川
「川」の続き
この2つの記事を読んだ親の仲間が、私に言いました。
支援者が「機能」だということはそのとおりで、そうあるべきだとは思うけど、
結局、わが子を安心して任せられることの保証が「この人だから」ということになっている。
だからどうしても、「この人」に託したいという親の思いになっている。

このつぶやきをヒントに、支援者が「機能」として、存在価値を発揮できるようになるには、何が整えばいいのか?を考えてみました。

■人は「材料」にあらず

よく「人材」と言うけれど、人は「材料」ではない。人と「その人が提供するサービス」は切り離せない。
人がやることだから、属人的になる。
<安定したサービス提供の担保(保証)>が、「いい人だから」ということ(のみ)になっている。
これが、「あの人だから」任せたい、になってしまう理由。

<安定したサービス提供の担保>が、「Aさんという個人」のままであっては、
「支援者は機能であって、代替可能で継続的な支援を提供し続ける存在」だという「そもそも論」は、単なるお題目にすぎない。

だから、属人的な支援ではなく「仕組み」をつくることが必要だ。よく言われます。
この「仕組み」について、できるだけシンプルに考えてみました。

■安定したサービス提供を担保する3つの仕組み

(1)複数人で支える体制があること
まず、複数の人が関わっていることが必要だ。そして、単に、バラバラの個人がいればいいわけではなく、Aという人をB、C、Dが支えるといった体制が要る。

(2)サービスの質を向上させる方法があること
よい支援は、知識とスキルとマインドが不可欠だ。

だが、それは、自然には身につかない。学校では習わないことを知り、自分の尺度では理解できない異文化交流するための「コミュニケーション」を学び、実際にやってみることが必要だ。
センスが良ければ独学でも学べる。しかし、時間がかかるし、センスは誰にでもあるものではない。
年月をかけて蓄積された知見がある。これを無視をしてはいけない。体系立って、教えるメソッドが要る。例えば、医学は、人類の初めからずっと実践と失敗をくりかえしながら、現時点でベストとなった教授法が確立されている。
発達障害への支援は、歴史が短く、そこまでの確立したものはないが、「これは間違いない」「こうすると改善する」という蓄積がある。
この蓄積を活かし、知識とスキルを向上させる「現時点でベスト」の育成方法を整えたい。

マインドも、教える方法がある。
支援者に求められるマインドの基本は、「立場の互換性」を心から実感していることだと思う。
「支援を受ける側に自分がいたとしたらどう感じるか? 支援者にどうして欲しいか?」この発想ができること。そのためには、「支援を受ける側に自分がいたかもしれない」とイメージする想像力が要る。
その想像力は、疑似体験や当事者の生の声を直接聴くことで育てることができる。

(3)評価と是正のプロセスがあること
これはどういうことかというと──

「良いことをした」→「正」のフィードバック
「悪いことをした」→「負」のフィードバック

というかたちで「評価」が与えられ、その影響により、

「良いことをした」→「正」のフィードバック→もっと「良いことをする」
「悪いことをした」→「負」のフィードバック→もう「悪いことはしない」

自ら「是正」できる一連のプロセスが存在するということです。

「良いこと/悪いこと」を判別するには、ジャッジする基準が整ってなければいけません。
また、その基準をあてはめ、行動の「良い/悪い」をジャッジする存在が必要です。
セルフジャッジもあり得ますが、ひとりよがりに陥りがちです。(1)の複数で支えることが、評価と是正のプロセスを回します。

以上の3つが整えば、<安定したサービス提供の担保>する仕組みになるのではないか──という整理と提案です。

■「達人」はいらない

福祉の人材育成が叫ばれています。わたしも、心から個々人のレベルアップを望む者です。
しかし、資格制度や研修ばかりを充実させても、必要十分ではありません。(2)サービスの質を向上させる方法ばかりに注力して、(1)と(3)を軽視していると、「達人」がまれに出てくるだけになってしまうでしょう。

「達人」は素晴らしいのですが、「この人(達人)」のサービスを担保する根拠(後ろだて)となるのは「この人」だけです。
「1人の達人」に過大な期待をいだき、達人の争奪戦を行っていては、けっきょくその達人もつぶしてしまいます。

(1)複数人で支える体制があること
(2)サービスの質を向上させる方法があること
(3)評価と是正のプロセスがあること


この3つを意識して、整えて、仕組みをつくりましょう。足りないものは何か?を常に考えて、とにかく、「ひとりぼっちではやらない」ことです。

できるだけシンプルにまとめてみました。ぜひご意見・ご指摘をいただけたらと思います。