2月7日に、「障害を理由とする差別の解消に向けた地域フォーラム」名古屋開催回に参加してきました。内容の報告は、後日内閣府のページであるそうです。
ここではわたしの印象に残ったことを記録しておきます。
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◆いよいよ差別を無くしていくぞ!

基調講演は、障害者政策委員会委員、筑波大学教授の柘植雅義さん。開口一番──

「障害を理由とする差別的取扱いの禁止が法律に明記された。いよいよ無くしていくぞ!というあらわれです」

と力強くおっしゃいました。
法律の解説をするときに、「これは理念を述べている」だとか様々な留保をつけて話をされることがよくあって、そのたびに、ブレーキがかかって、つんのめってしまうような印象を受けるのですが、「いよいよ無くしていくぞ!」というのはすがすがしかったです。

講演の内容は、先だってパブリックコメントにかけられ(過去記事)、まもなく閣議決定の見込みの「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(案)」(案はこのページにあります)についての解説でした。配付されたパワーポイントスライド資料は、ぜひ内閣府のページに掲載して欲しいです。国民みんなが伝え合って理解を深めるべきものだと思いました。

以下、1ページ目と2ページ目の写真を載せておきます(クリックして拡大)。
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◆障害者差別解消法は、障害者基本法第4条を具体化している

1ページ目で確認したこと:障害者差別解消法は、障害者基本法第4条を具体化している。そして、1月に又村あおいさんに教えてもらったことですが、障害者権利条約批准に向けて、障害者基本法は改正されました。

障害者権利条約>障害者基本法>障害者差別解消法とつながっているんですね!

【参考】
・内閣府:障害者施策の総合的な推進−基本的枠組み−
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/wakugumi.html
⇒このなかにある、障害者制度改革の推進のための基本的な方向について【概要】(PDF形式:116KB)は、具体的にどう施策が進められてきたかわかりやすいので一見の価値があります。
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2ページ目で確認したこと:基本方針は、4つのブロックに整理できる。

1.障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する基本的な方向
2.行政機関等及び事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する共通的な事項
3.行政機関等/事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項
4.その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項

◆不当な差別的取扱いと合理的配慮〜行政と事業者の違い?

「2 共通的な事項」を読むと、行政機関等と事業者(いわゆる民間事業者)ともに、不当な差別的取扱いは法的義務として禁止されるし、合理的配慮が「求められる」ことにも、差はなくて、共通していることがわかります。

それでは、行政機関等と民間事業者とで違いがあるのはどこか? 「3」合理的配慮の提供が、行政機関等においては法的義務とされています。他方、民間事業者については、合理的配慮の提供については努力義務とされています。その理由は、解説にはこう書かれています。
事業者については、不当な差別的取扱の禁止が法的義務とされる一方で、事業における障害者との関係が分野・業種・場面・状況によって様々であり、求められる配慮の内容・程度も多種多様であることから、合理的配慮の提供については、努力義務とされている。

理由としては弱いのではないかと思うのですが、合理的配慮の必要な場面、求められる配慮の内容が、行政のようには定型的・一律には定義できないから、規範的な義務とするには、輪郭(適用範囲)があいまいだ、ということのようです。

この「法的義務としなかった理由」はとっても重要ですね。
なぜなら、定型的・一律に定義できるような合理的配慮が業界スタンダードとして確立すれば、主務大臣による行政措置のかたちで合理的配慮措置をするように指導等ができる可能性がでてくるからです。主務大臣医による行政措置については法12条に定められています。

例えば、鉄道など公共交通機関で、一律レベルの合理的配慮が実施され、スタンダードになっていった場合、そのレベルに達していない交通事業者に対して指導をするとか。物理的なバリアフリーがわかりやすいが、もちろんそれに限られたものではなくて、教育機関での人的な加員であったり、さまざまな配慮がありえます。

◆どうやって紛争を解決していくのか?

「4.その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項」が個人的には最も関心があるところでした。現実の紛争・対立をどう解決していくと法は考えているのか。
5 その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項2
 2 相談及び紛争の防止等のための体制の整備
 法は、新たな機関は設置せず、既存の機関等の活用・充実を図ることとしており、国及び地方公共団体においては、相談窓口を明確にするとともに、相談や紛争解決などに対応する職員の業務の明確化・専門性の向上などを図ることにより、障害者差別の解消の推進に資する体制を整備するものとする。

これを読むと、「新たな機関は設置せず」という箇所でひっかかってしまって、消極的な印象を受けるのですが、新たな機関の設置が「禁止」されているわけではなく、各自治体の判断で必要と判断すれば設置はさまたげられません。(フォーラム後半のシンポジウムのところで、大曽根寛氏(名古屋市障害者施策推進協議会会長)が「個人的見解」とことわりつつ、「名古屋市の場合、差別解消相談センターの設置などを検討するとよいのでは」と発言されていました。)

わたしが思ったのは、相談および紛争解決のための専門職員が必要だなあということです。「その行為は差別である」と判別し、宣告できる人が。
人の価値観はさまざまで、慣性の法則が働いているから、「考えを変える」ことは非常に困難です。「何が差別で、どんな合理的配慮が求められているのか」について、異論を持っている人に対応していくためには、知識や経験の蓄積があり、さらに人間観と信念が必要だと思うのです。そして、紛争解決のスキル(たとえばコミュニティーファシリテーター)も身につける必要があるでしょう。このような人材を、公務員のルーティンの人事異動のなかで育てることは相当難しいと思います。
もし万が一、差別を内面化してしまっている人が相談窓口に立ってしまったら、そこが差別の二次被害の現場になってしまいます。

これから、試行錯誤がされていくと思います。最初からできる人はいません(じぶんにやれといわれても責任の重さに尻込みするでしょう)。この仕事の難しさ、レベルの高さを自覚して、目標を目指して、学び続ける学び合うプロセス(そしてそれを支える体制)が大事だと思います。
この「相談窓口に立つ」ということが「尊敬に値する」とみんなが認めるような重要な職であるという認知がされていくことを望みます。

◆障害者差別解消支援地域協議会とは

最後に、「障害者差別解消支援地域協議会」について。
5 その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項4
 4 障害者差別解消支援地域協議会
(1)趣旨
 障害者差別の解消を効果的に推進するため、地域における様々な関係機関が、地域の実情に応じた差別の解消のための取組を主体的に行うネットワークとして、障害者差別解消支援地域協議会を組織することができるとされている。
(2)期待される役割
 地域協議会に期待される役割としては、適切な相談窓口を有する機関の紹介、具体的事案の対応例の共有・協議、協議会の構成機関等における調停、斡旋等の様々な取組による紛争解決、複数の機関で紛争解決等に対応することへの後押し等が考えられる。

まだイメージがわかないのですが、法がこの協議会に期待をかけていることは伝わってきます。

尾上浩二さんがおっしゃっていたとおり──「後押し」にもいろいろなレベルがある。「がんばってね」と一声かけるのも「後押し」です。地域協議会を実質的に機能させるためには、最初に柘植さんの言葉として引いた「障害を理由とする差別的取扱いを、いよいよ無くしていくぞ!」という魂をこめなくちゃと思います。

・内閣府:障害者差別解消支援地域協議会の在り方検討会
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html#kentoukai

このページに、平成26年1月から3月にかけて検討されて定められた障害者差別解消支援地域協議会体制整備事業の実施に係る同協議会の設置・運営暫定指針(PDF形式:301KB)があります。既にモデル実施が始まっており、中間報告会も開催されたそうです。

・内閣府:障害者差別解消支援地域協議会体制整備事業報告会の概要について
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/houkoku/gaiyo.html

名古屋市でもモデル実施に手をあげて、始めるといいですね!(希望)

フォーラムに参加して、すぐには感想を書けなかったのは、「これはたいへんなことが起きているぞ」と思ったからです。もやもやする気持ちも同時にうずまいて。
それは、「これまで、差別に無自覚だったわたしたちみんなが、差別を解消するために努力をし合う」ことの尊さと困難さを思ったから。
なにかっていうと本音とタテマエを使い分けて、「本音至上主義」(「そんな理想を言ったって、できるわけないよ〜」)のわたしたちに、そんなことができるだろうか? 「合理的配慮を、逆差別!!」と吹き上がることもあるでしょう。

心に誓うのは、「負けない」ということです。

こわいなあと思う一面もあります。それでも。多様性を抱きしめ、みんなで、ルールとツールをつくっていく、オーナーシップを発揮して生きられる街がいい。