わたしは言葉が好きだ。知らない言葉に出会うと意味を知りたくなる。語源にも興味がある。

今朝、歩きながら、この言葉を知って「影響を受けた」言葉ってなんだろう?と考えていた。
名言とかそういうのではなくて、単語それ自体で。

思いついたのが「不可逆的」という言葉だった。

「変化が起きて、もう元には戻らないこと」

この言葉の冷徹さを思い知ったのは、リハビリテーションに関する本を読んだ時だった。
事故や病気で損なった機能が、元のようには戻らない。不可逆的変化が起きてしまった。

その後、子どもの障害がわかり、「治癒可能ならそれは病気で、治癒ができないから障害」だということを知り、初めて「不可逆的」の真の意味を実感した。

たくさんの小説や映画で、タイムトラベル物がつくられるのは、「起きてしまった変化を過去に遡って変える」願望を人は常に持ち続けているからだろう。この願望を消すことは、人の感情から「後悔」をなくすことだから、まず不可能だ。

「元に戻す」ことはフィクションのなかでは成功しても、現実では起こらない。

やってしまったこと
言ってしまったこと
起こってしまったこと
知ってしまったこと
損なわれてしまったこと

もう元には戻せない。
起きた変化を前提に、未来をつくっていくだけだ。

でもなんで…
どうして……
悔いは消えない。

「どうにかできたんではないか」「避けられたのではないか」そう思う気持ちは包帯の下でにじむ血のように。心の奥で痛み続ける。そういう日もある。