logmi「無関心な人を動かす2つの方法 「意識の高い人以外」を集めるには」という記事のなかで、記事の主題ではありませんが、「ADHDは狩猟民族の時代に活躍できた」という仮説を知りました。
大人になってみて自分なりに理解できたのは、おもしろい仮説があってね。このADHD傾向の人っていうのは、狩猟民族の生き残りであるという仮説があるんですね。これね、結構おもしろくて。生き残りというか、狩猟民族の時代には活躍できたんじゃないかっていう仮説なんですね。 ADHDの人って視覚優位なんですよ。目で物事を追うんです。同時複数に物事を追うことができる。こいつだって獲物を定めたら、衝動的に行動ができるんですね。それってADHDの傾向に当てはまって、そういう傾向の人って狩猟民族の時代は活躍できたんです。
ただ暗黒の時代がやってきて、農耕・牧畜民族の時代ですね。この時代にまったく逆転するんですね。

この仮説の出典が気になり、Googleで探してみました。

私が確認できたのは、1997年に米国で発表されたトム・ハートマンの『ADD/ADHDという才能』がこの仮説の初出のようです。日本では2003年に翻訳が出版されて、ブログなどで話題になった様子。
ADD/ADHDという才能
トム・ハートマン
ヴォイス
2003-07-01


この仮説が、2015年になって注目された経路を知りたくて調べてみました。Googleでヒットする記事からたどってみると以下のようなことでした。

(1) 2014年10月31日
New York Timesに、リチャード・フリードマン教授が寄稿したコラム記事が掲載された。ここでは、ハートマン氏の説には触れていない。

・A Natural Fix for A.D.H.D.
http://www.nytimes.com/2014/11/02/opinion/sunday/a-natural-fix-for-adhd.html

(2) 2014年11月25日
Mail Online(英国のタブロイド紙The Daily Mailのウェブ版)で、(1)を元ネタにして、リチャード・フリードマン教授の説を紹介する記事が掲載された。

・Did ADHD once have an evolutionary advantage? Traits linked with disorder may have helped nomads survive when hunting
http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-2848548/Did-ADHD-evolutionary-advantage-Traits-linked-disorder-helped-nomads-survive-hunting.html

(3) 2015年1月25日
日本では、(2)を介して(1)を参照して(※)、バイラルサイトであるカラパイアが、翻訳・編集して紹介した。この記事が、Exciteニュースや様々なまとめサイトに取り上げられて広がった。
※カラパイアでは、参照記事として(1)だけが挙げられているが、使用写真は(2)から。

・世が世なら・・・発達障害「ADHD」は狩猟採集社会では優位性を持っていた。現代でも適した職業や場所が見つかれば特性を強みに変えられる可能性(米研究)
http://karapaia.livedoor.biz/archives/52183303.html

以上が、仮説の伝播経路のようです。

仮説そのものが正しいかどうかはわかりませんが、ADHDの特性が太古の人類から由来するというストーリーは「ロマン」として魅力的だなあと個人的には思いました。

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ちなみに、(1)A Natural Fix for A.D.H.D.の内容は、狩猟民族のことだけクローズアップされていますが、他にも現在の脳科学研究をもとに、
「脳のドーパミンの報酬回路の機能に関して、ADHDの特徴がどこにあるのか」
「ADHDと診断される人が急増している理由は何か」
「子どもの頃ADHDと診断された人が大人になってADHD症状がなくなるケースがあるのはなぜか」
「子どもの学校のカリキュラムを変えることで、薬の使用をおさえられるのではないか」
といったことも論じています。むしろそれらがメインですね。知的刺激を受けました。