■社会保障費をめぐる国の綱引き〜介護保険制度改革のリーク記事?

★1 3つどもえの綱引き

 社会保障費(この中には、公的年金も、介護保険、健康保険、障害者支援費制度などすべてが含まれる)をめぐる国の綱引きが激しくなってきました。
 カイパパが注視しているのは以下の3つの動きです。

・(1)財政制度等審議会(財政審)→平成17年度予算編成方針に影響を与える
 (財務大臣の諮問機関)      【錦の御旗】財政健全化、歳出改革
  事務局:財務省

◇平成17年度予算編成の基本的考え方について(建議)(2004年5月17日公表)
・財政制度等審議会:平成17年度予算編成の基本的考え方について
http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/tosin/zaiseia160517/zaiseia160517a.htm

【報道】
・毎日新聞2004年5月18日:財政審:予算編成で建議提出 来年度予算、歳出の抑制の重要性強調 
http://www.mainichi-msn.co.jp/search/html/news/2004/05/18/20040518ddm008010068000c.html

・(2)経済財政諮問会議→「骨太の方針」予算編成方針にも影響を与える
 (総理大臣の諮問機関)【錦の御旗】構造改革
  事務局:内閣府

◇骨太の方針2004素案(2004年5月19日公表)
・内閣府 経済財政諮問会議:第11回会議情報(平成16年5月19日)
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/new.html

【報道】
・朝日新聞2004年5月19日:特別会計抑制へ目標策定へ 骨太の方針・第4弾素案了承
http://www.asahi.com/business/update/0519/129.html

・朝日新聞2004年5月19日:保険料徴収見直し 「骨太の方針・第4弾」素案
http://www.asahi.com/money/pension/news/TKY200405180417.html

・(3)社会保障審議会→障害者支援費と介護保険などの制度設計に影響を与える
 (厚生労働大臣の諮問機関) 【錦の御旗】ゴールドプラン、障害者基本計画など
  事務局:厚生労働省

◇答申は6月の予定

★2 分析――厚生労働省は出遅れている

 財政審も経済財政諮問会議も「社会保障費の抑制」を重要な柱として掲げ、すでに公表されました。特に、財政審は、社会保障費と地方への補助金の削減について、「憎悪」さえ感じるような気合が入っています(一方、防衛費やODAについては、さらっと触れただけ)。経済財政諮問会議は、どちらかというと構造改革、景気回復、経済再生がメインテーマなので、社会保障制度が一番の課題と強調しているわけではありませんが、メンバーである奥田経団連会長や谷垣財務大臣が、財政審の建議をベースに社会保障費の削減・数値目標の設定について主張しており、最終答申には何らかの社会保障費抑制の趣旨が盛り込まれる予想です。

 一方の社会保障審議会は、障害者支援費と介護保険との統合問題での結論が見えず、出遅れており、攻め込まれています。

 財務省と官邸から、「社会保障費削減、数値目標設定」と迫られているのに対して、「お金は必要です。でも、制度設計は現在話し合い中です」と冷や汗をたらたら流しながら説明しているような状態です。これでは、夏の概算予算要求は乗り切れないでしょう。

★3 リーク?――朝日新聞2004年5月20日記事

 どうするんだろう? と思ってみていたら、朝日新聞がスクープを打ちましたね。

・朝日新聞2004年5月20日:20〜39歳からも半額介護保険料を徴収へ 厚労省案
http://www.asahi.com/national/update/0520/015.html

■20〜39歳からも半額介護保険料を徴収へ 厚労省案

 05年に予定される介護保険制度の初の本格的な改正へ向けた、厚生労働省案の骨格が19日分かった。新たに20〜39歳も被保険者に加え、40〜64歳の保険料の半額程度を徴収する内容を柱に検討している。同時に給付対象も、現行制度の高齢者から、障害者や難病、末期がんなど、介護や支援が必要なすべての人に広げる。身体・知的障害者の現行支援費制度も統合する。介護保険財政が行き詰まる懸念を背景に、当初の介護保険の目的を大きく転換する内容で、論議を呼ぶのは必至だ。

 ニュースソースが明らかではありませんが、具体的な内容を記者は確信を持って書いています。うがった見方かもしれませんが、攻め込まれている厚生労働省(のかなり上層部)が意図的にリークしたのではないでしょうか。
 00年度に導入された介護保険制度は、高齢化による利用者の急増で、04年度当初予算で5.5兆円の給付総額が25年度には約20兆円になると見込まれる。現在の仕組みでは、被保険者の負担が過大になるのが確実で、財政安定化が課題となっている。03年度に身体・知的障害者を対象に始まった障害者支援費制度も、初年度から財政が行き詰まっており、介護保険との統合で解決を図る。
 介護保険の担い手を拡大する場合、負担に見合う給付の充実が必要になる。現行制度は、40〜64歳は脳梗塞(こうそく)など加齢に伴う15の特定疾病でなければサービスを受けられないなどの問題点も指摘される。
 このため、介護保険の目的自体を「全国民の介護・支援を全国民で支える」との内容に大幅に拡大する。高齢者や身体・知的障害者のほか、現在は支援費の対象でない精神障害者や各種の難病、末期がん患者も、要介護認定を受ける条件で対象にする方向で検討。児童福祉法で介護を受けたり施設に入ったりできる障害児が18歳未満のため、被保険者にしない18、19歳も暫定的に給付対象に加える案が有力だ。
 厚労省は今後、正式案を9月にも公表、12月末に政府の介護制度改革大綱を決定する。来年1月の通常国会に関連法案を提出し、3年ごとの介護報酬見直し年度でもある06年度から実施したい考えだが、被保険者や給付対象の拡大範囲、保険料の徴収水準などで与党と調整が難航することも予想され、ずれ込む可能性もある。

 これが、厚生労働省が考えている制度なのですね。
 5月16日の「介護保険と障害者支援費を考える討論集会」で、パネリストの方が「厚生労働省は、"着物のそでから鎧が見え隠れする"ようなマズイやり方をしているなあ」と感想をもらしていましたが、そのとおりですね。
 討論集会での厚生労働省の村木厚子障害保険福祉部企画課長のお話は、一所懸命に当事者の意見を聞きながら決めていこうとしているんだなと感想を持ちましたが、厚生労働省としての制度設計案は既にあるのだろうと思っていました。

 私は、財政審の建議、経済財政諮問会議での議論内容、そして何よりも小泉総理大臣のキャラクターを検討してみると、このまま決断できずにズルズルいくと最悪のシナリオが待ち受けている気がします。
 厚生労働省は「あの朝日新聞の記事は、内部の案が流出しただけ」と火消しに回るのではなく、正々堂々と「これで進めたい。これしかないと思っている。その上で、障害者に必要な部分の中身の議論に入ろう」と宣言するべきだと思います。
(こんなはずじゃなかったのに…と私も思うのだけれど……)


【参考サイト】
・全国自立生活センター協議会:特集:介護保険と障害者施策
http://www.j-il.jp/jil.files/kaigohokenn/kaigohoken_top.htm

【過去記事】
・障害者支援費と介護保険との統合問題:財政制度等審議会4月13日
http://kaipapa.livedoor.biz/archives/452683.html

・【討論集会】介護保険と障害者支援費を考える討論集会
http://kaipapa.livedoor.biz/archives/580326.html