■佐々木正美先生講演会レポート/メモ(4)優れた療育者の資質

佐々木正美先生講演会レポート/メモ(1)全体の感想
佐々木正美先生講演会レポート/メモ(2)自閉症の特性
佐々木正美先生講演会レポート/メモ(3)想像力の独特さ
からの続きです。

★優れた療育者の資質
 今回の講演会でとても印象に残った佐々木先生の発言――

 自閉症の人=「想像力の問題で苦しんでいる人」
         ↑
 このことをどれくらい豊かな想像力を持って、どんな支援ができるかを考えられる人が優れた療育者です。

「どうしてわかんないの?!」
「何度言ったらわかるの?!」
「まだできないの?!」
 というセリフがでるのは、自閉症を理解していない証拠。

「わかるように伝える」ために、「こうしたらわかるかな?」と提示の仕方を考え、実践する人がよい。1回でうまくいくわけがないので、試行錯誤をいとわずやる。

★よい寄り添い方

「いったいこの子は、どのように感じて受け止めているのか?」
    ↑
 自閉症の特性を理解して想像する
    ↓
 自分(メインストリーム)の価値観、感覚の延長で考えない

たとえば、
・休み時間に「何をしてもよい」と自閉症の人を放っておいてしまう支援者はよくない
 自閉症の人に「何をしてもよい」という概念はない。
→「Aしてもよい」「Bしてもよい」「Cしてもよい」といくつかの選択肢を提示して選ばせる工夫(※「Aしなさい」では、自由時間にならない)

★親が陥りがちな罠

 実は私も「なんべん言ったらわかるの!」とかしばしば叫んでいます。自閉症のことを何も知らなかった頃にくらべたらずいぶん減っていますが今でもあります。

「怒りたいのに怒ってはいけない」
「怒っても効果がない」
→だから、怒りを抑える
 真面目で子どもを愛する親ほどがんばってしまいます。

 しかし、長時間子どもと一緒にいれば、当然怒りたくなる場面がたくさんあるわけです。それを抑え続けると、たしかに怒らないようになっても、人間の感情は「怒り」だけを抑え込むことはできないみたいで、「よろこび」や「たのしい」「愛情」という感情まで抑えられてしまうことがあるそうです。

 どうしたらいいんでしょうね。
「時には(自分のために)怒る」「泣く子どもと一緒に泣く」とかもアリだよな、親だって人間だもん、と――とりあえず自分を許してしまうことが大切なのかもしれません。

 その上で、妻が、よく言って、実践しているように「怒らないですむように、できる範囲で環境を整える」ということなんだと思います。たとえば、
・触ってはいけない危険なものは、手の届かない場所に置く
・誘惑的なビデオやおもちゃは見えないように布で隠す
・できるだけ、部屋をシンプルにキレイに保つ
 など、カイと親の双方にとっての心の平安をもたらす工夫をする。

 それでも、環境を整えたつもりが、カイのほうが一枚うわてで、いたちごっこだったり……(^^;。現在冷蔵庫に執着するカイの連続攻撃にほとほと参ってしまったり。カンタンじゃない、エンドレスです。

 忘れてはいけないこと。家庭は療育の場でもあるけど、親の生活の場でもあります。専門機関や専門家とはちがいます。
 だから、環境も感情も、妥協点を見つけていく試みなんだと思います。

「泣いたり、笑ったりしながらカイも私たちもハッピー☆」は不可能じゃないので(きっと成長・発達が解決する部分も多い)、あきらめず続けるだけですね。

★もう一度〜原点に戻る

 この連載のはじめに「原点に戻る」と私は書いたけど、「原点」ってなんだ? もう一度考えてみました。

 それは、「自閉症は、自分(私)とは違う世界を生きている」ことを認めることです。

 ちがっていることを、悔しがったり、残念がったりするのは、親のエゴです。私の価値基準で、カイの世界を評価しているだけ。
 カイは「そのように生まれてきた」のだから、その世界・文化を尊重して、近づきたい。
 これこそが、原点なのではないか。
 だから、ちがっていることを泣いたり悲しんだりするよりも、もっと、カイを理解したい。

佐々木正美先生講演会レポート/託児(1)〜物理的構造化の工夫」につづく
【このレポートについて】
 私の息子、カイは、5才になるカナータイプの自閉症です。機能的な言葉(場合に合った使い方のできる言葉)は、「イヤー」(嫌)と「イテー」(痛い)の2語しかありません。したがって、講演会を聞くときも、わが子をイメージして聞いています。

 今回アップしている講演会レポートは、何ら公式な講演録ではなく、あくまでも〈カナータイプの幼児を持つ親の学んだ、感じたこと〉をまとめているものです。
 文責はカイパパにあり、聞き間違いや言葉足らずの部分は全て私の責任であることをお断りしておきます。