■名古屋市自閉症・発達障害支援センター設立の要望書(つぼみの会)
★1 名古屋市自閉症・発達障害支援センターの設立要望書
自閉症協会愛知県支部(つぼみの会)が名古屋市へ提出した要望書が公開されています(許可を得て全文転載)。
2004年12月3日に、発達障害者支援法が成立しました(2005年4月1日施行)。名古屋市は既に、名古屋市障害者基本計画で、自閉症・発達障害支援センターの設立をうたっています(参考記事)。
この要望書で注目したいのは、つぼみの会が、やみくもに「早期開設」を要望しているのではなく、「開設準備会議」を設置して、自分たちの団体だけでなく、「自閉症・発達障害のすべてのライフステージに関わる機関が連携し協議の場を設け、パートナーシップを築きながら自閉症・発達障害支援センターの開設を進めること」と提案しているところです。
私も、準備段階から、自閉症・発達障害への支援に関わる人たちみんなが集まり一緒に考えることは不可欠なプロセスと考えます。
なぜか?
★2 確認しておきたいこと〜支援は難しい
(1)一筋縄ではいかない支援
・自閉症・発達障害に対する支援は難しくて、みんなが試行錯誤をしながら取り組んでいかなければいけない。
・ひとりで支援を抱え込もうとしてもつぶれてしまいます。時間もかかります。助け合う仲間を見つけて支援者同士も支えあいながら取り組む必要があります。
(2)ヨコ=現在の連携
・自閉症の人は、「場面」ごとで行動がまったく違うことがよくある(「場所」と「意味」が1対1で結びついているため)。その人の全体を把握するためには、すべての「場面」で関わる人々が情報を持ち寄り共有する必要があります。
(3)タテ=過去−現在−未来の連携
・「問題行動」といわれるものの多くは、幼児期に芽吹き、学齢期に育ち、青年期に「花開く」といわれています(…いやな言葉だ)。
つまり、「今」だけをみてどれだけ考えても原因が見つからないことがあり「過去」に立ち戻って「そのときの出来事や支援はどうだったのか? それがどんな体験として残っているのか?」を探らなければならないことがあるのです。通園施設、保育園でどんなだったか? 小学校ではどうだった? これまでの人生でこの人に関わった全員が集まって考える場が必要です。
・このことは、「現在」の支援も「未来」の本人の姿をイメージしながら関わっていくことの重要性も意味します。
時間軸を超えた連携が必要なのです。
(4)ネット=網の目のような支援システム
・このようなタテ・ヨコ縦横無尽にはりめぐらされた網の目のような支援システムは、行政だけ、あるいは親の会だけでも築くことはできません。人材、お金、情報などの資源をかきあつめて創り上げて行くもの――「自閉症の子は、一人では、一年は幸せになれても、一生は幸せになれない」のです。
★3 なぜ開設準備段階からのパートナーシップが必要なのか
アメリカ独立戦争のときに、独立の信念を与えた言葉があります。「代表なければ課税なし」――自分たちの意見の代表者がいないイギリスの議会で徴税が決められるのはおかしい!――
決定の過程に、自分たちの意見が反映されていなければ、
「自分たちのセンターではない」
「私はそんなことは聞いていない。知らない」
「あんたんとこだけで全部、勝手にやってね」で終わりになってしまいます。
発達障害への支援は上記のとおり、難しい……。とてもじゃないが、行政だけでやりきれるものではない。
パートナーシップは、親の会だけじゃなく、医療・保育・教育・就労・権利擁護、NPO、社会福祉法人、ボランティアなどすべてについてです。行政の中だけを考えても、福祉部門と教育部門、就労部門などなどタテ割りのままでは難しい。
発達障害者支援法では、この「連携の要」として発達障害者支援センターが位置づけられ、全都道府県と政令指定都市への設置が進められています。
名古屋市自閉症・発達障害支援センターが真の意味で「連携の要」となるために、準備段階からパートナーシップを組んでしっかり取り組んで、この貧しい状況の改善につなげていきましょう♪ 応援してます。
★1 名古屋市自閉症・発達障害支援センターの設立要望書
自閉症協会愛知県支部(つぼみの会)が名古屋市へ提出した要望書が公開されています(許可を得て全文転載)。
平成17年1月17日
名古屋市長
松 原 武 久 様
社団法人日本自閉症協会愛知県支部
支部長 濱田 徹哉
名古屋市自閉症・発達障害支援センターの設立について(要望)
日頃より、私ども(社)日本自閉症協会愛知県支部に格別のご理解、ご支援を賜り、お礼申し上げます。
これまで、自閉症児・者は日々の生活に多くの困難を抱えながら苦労を重ねてきました。昨年12月には発達障害者支援法が国会で成立いたしましたが、自閉症をはじめとする発達障害は、残念ながらこれまで法律や制度の谷間に置かれ、支援の対象とならず、特性にあった支援を受けることが出来ませんでした。自閉症は、その障害特性から、診断を受けてから生涯にわたりその人に合わせた個別支援が必須であります。
よって、当事者とその家族が地域で安心して暮らせるシステムを作るため、下記のとおり要望いたします。
記
1.名古屋市自閉症・発達障害支援センターの開設準備会議の設置を要望します。
すでに名古屋市では名古屋市障害者基本計画『第2章 重点的に取り組むべき課題』において、自閉症・発達障害支援センターの設置を明記しています。また、発達障害者支援法の条文にも、全都道府県・政令指定都市に支援センターを設置し、発達障害者のライフステージ全般にわたる一貫した支援を担う役割を定めています。
幼児期における障害の早期発見・早期療育、家族に対するケア、学童期では一人一人の発達障害児のための特別支援教育、青年期以降の就労・生活の場の確保・支援、また権利擁護など、現状では残念ながら分断されている支援を、つなぐものとして、自閉症・発達障害支援センターが位置づけられるものであると考えます。
その第一段階として、そのあり方・機能を充分な協議を尽くす場である、「開設準備会議」の設置を要望いたします。
2.開設準備会議に関係機関・団体の参加を要望します。
「自閉症・発達障害支援センター」は、当事者団体、行政機関、医療、教育機関、就労や生活の場を運営するNPOや社会福祉法人など、発達障害に関わるすべての関係者をつなぐ中核センターでなければ意味をなさないと考えます。その設置については、自閉症・発達障害のすべてのライフステージに関わる機関が連携し協議の場を設け、パートナーシップを築きながら自閉症・発達障害支援センターの開設を進めることを強く望みます。
私ども(社)日本自閉症協会愛知県支部は約1,000名の保護者会員(名古屋市内約400名)と100名の専門家の賛助会員で、日々自閉症児・者に対する正しい理解と支援を求めて活動を続けています。真に実効性のある名古屋市自閉症・発達支援センターの実現に向けて、最大限の協力をさせていただきます。ぜひ今後とも、私どもと目線を同一にして同じテーブルの上で、協議を重ねながら進めていただきたく、切にお願いいたします。
2004年12月3日に、発達障害者支援法が成立しました(2005年4月1日施行)。名古屋市は既に、名古屋市障害者基本計画で、自閉症・発達障害支援センターの設立をうたっています(参考記事)。
この要望書で注目したいのは、つぼみの会が、やみくもに「早期開設」を要望しているのではなく、「開設準備会議」を設置して、自分たちの団体だけでなく、「自閉症・発達障害のすべてのライフステージに関わる機関が連携し協議の場を設け、パートナーシップを築きながら自閉症・発達障害支援センターの開設を進めること」と提案しているところです。
私も、準備段階から、自閉症・発達障害への支援に関わる人たちみんなが集まり一緒に考えることは不可欠なプロセスと考えます。
なぜか?
★2 確認しておきたいこと〜支援は難しい
(1)一筋縄ではいかない支援
・自閉症・発達障害に対する支援は難しくて、みんなが試行錯誤をしながら取り組んでいかなければいけない。
・ひとりで支援を抱え込もうとしてもつぶれてしまいます。時間もかかります。助け合う仲間を見つけて支援者同士も支えあいながら取り組む必要があります。
(2)ヨコ=現在の連携
・自閉症の人は、「場面」ごとで行動がまったく違うことがよくある(「場所」と「意味」が1対1で結びついているため)。その人の全体を把握するためには、すべての「場面」で関わる人々が情報を持ち寄り共有する必要があります。
(3)タテ=過去−現在−未来の連携
・「問題行動」といわれるものの多くは、幼児期に芽吹き、学齢期に育ち、青年期に「花開く」といわれています(…いやな言葉だ)。
つまり、「今」だけをみてどれだけ考えても原因が見つからないことがあり「過去」に立ち戻って「そのときの出来事や支援はどうだったのか? それがどんな体験として残っているのか?」を探らなければならないことがあるのです。通園施設、保育園でどんなだったか? 小学校ではどうだった? これまでの人生でこの人に関わった全員が集まって考える場が必要です。
・このことは、「現在」の支援も「未来」の本人の姿をイメージしながら関わっていくことの重要性も意味します。
時間軸を超えた連携が必要なのです。
(4)ネット=網の目のような支援システム
・このようなタテ・ヨコ縦横無尽にはりめぐらされた網の目のような支援システムは、行政だけ、あるいは親の会だけでも築くことはできません。人材、お金、情報などの資源をかきあつめて創り上げて行くもの――「自閉症の子は、一人では、一年は幸せになれても、一生は幸せになれない」のです。
★3 なぜ開設準備段階からのパートナーシップが必要なのか
アメリカ独立戦争のときに、独立の信念を与えた言葉があります。「代表なければ課税なし」――自分たちの意見の代表者がいないイギリスの議会で徴税が決められるのはおかしい!――
決定の過程に、自分たちの意見が反映されていなければ、
「自分たちのセンターではない」
「私はそんなことは聞いていない。知らない」
「あんたんとこだけで全部、勝手にやってね」で終わりになってしまいます。
発達障害への支援は上記のとおり、難しい……。とてもじゃないが、行政だけでやりきれるものではない。
パートナーシップは、親の会だけじゃなく、医療・保育・教育・就労・権利擁護、NPO、社会福祉法人、ボランティアなどすべてについてです。行政の中だけを考えても、福祉部門と教育部門、就労部門などなどタテ割りのままでは難しい。
発達障害者支援法では、この「連携の要」として発達障害者支援センターが位置づけられ、全都道府県と政令指定都市への設置が進められています。
名古屋市自閉症・発達障害支援センターが真の意味で「連携の要」となるために、準備段階からパートナーシップを組んでしっかり取り組んで、この貧しい状況の改善につなげていきましょう♪ 応援してます。
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