■自衛隊は「自閉隊」 石破防衛庁長官が発言

■自衛隊は「自閉隊」　石破防衛庁長官が発言

中日新聞2004年3月17日：自衛隊は「自閉隊」　石破長官が発言　不適切な比ゆ、批判も

　石破茂防衛庁長官が16日夕、都内で開かれたパーティーで、自衛隊について「今まで半分やゆ的に自閉隊と言われていたところがある。自閉症の子供と書いて自閉隊だ」と述べた。
　自衛隊に対する国民の理解がなかなか進んでこなかったことに対する自省の弁とみられるが、自閉症は社会の理解が進んでいない難しい障害。単に「心を閉ざす」意味という誤解も根強いだけに、自閉症の子供を引き合いに出したのは不適切で批判の声も上がっている。

　この事件でわかったことは、

・石破長官は、自閉症を「自ら心を閉ざす病のようなもの」と誤解している。
・彼の発言によって傷つく人が（きっとパーティーに参加した自民党議員の中にも）いるとは思いもしなかったのだろう。
・発言の問題性をすぐに理解して報道できる新聞記者がいるなんて夢にも思わなかったのだろう。

「気のきいた発言で、パーティーでは大ウケだろう」と軽い気持ちで語ったのでしょう。石破さん、ウケましたか？

　感情的に怒るよりも、一国の大臣が、誤解にもとづき、面白おかしいネタとして「自閉症」を持ち出す、この現実を直視しなければいけません。
　無力感におそわれそうになりますが、カイパパ通信blog☆自閉症スペクタクルでは、地道に、自閉症の理解を広げていきたいと思っています。
　大切なことはくりかえし伝えていかなければなりません。

　自閉症は脳の器質的障害です。
　引きこもりや、心を閉ざす病ではありません。
　自閉症は生涯にわたって続く障害であり、病気が治癒するという意味では、治癒することはありません。
　しかし、適切な教育と支援によって、安心してしあわせに暮らしていくことはできます。

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【追記】2004年9月23日
　この発言後、石破長官は速やかに定例記者会見で謝罪しています。

・カイパパ通信blog☆自閉症スペクタクル:「自閉隊」発言　石破長官が謝罪（2004年3月20日）
http://kaipapa.livedoor.biz/archives/257168.html
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【過去関連記事】
・【自閉症】自閉症を知ってほしい(1)
http://kaipapa.livedoor.biz/archives/25101.html

【自閉症理解のために最高の入門サイト】
・あたらしい自閉症の手引き
http://www.nucl.nagoya-u.ac.jp/~taco/aut-soc/rainman/

【パートナーサイトの記事】
・TamagoBlog It's a picture world: 【ニュース】石破防衛庁長官：「自衛隊は自閉隊」と発言


【発言に関する新聞社の報道】
・ asahi.com : 政治：「自衛隊は『自閉隊』と言われていた」　石破防衛庁長官
http://www2.asahi.com/special/jieitai/TKY200403160319.html

・YOMIURI ON-LINE / 政治：自衛隊は「自閉隊」…石破長官、パーティーであいさつ
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20040316i416.htm

・Mainichi INTERACTIVE：石破防衛庁長官：「自衛隊は自閉隊」と議員パーティーで発言　（3/19追記）
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/seiji/20040317k0000m010093002c.html

・asahi.com : 政治：石破長官の「自閉隊」発言、野党から批判相次ぐ　（3/19追記）
http://www.asahi.com/politics/update/0317/007.html

【「自閉隊」は石破長官のオリジナルではない】
・災害医学・抄読会 991126：自衛隊の災害派遣活動（小林隆史　富士常葉大学環境防災学部講師）
http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/circle/00/k609gaku.html

　現在の自衛隊は、要請があれば、自衛隊の能力のおよぶ限り、可能なことは何でもやろうという積極的なスタンスになっていると考えていただいてよいかと思います。（中略）
　皆さんの側から働きかけてくだされば、自衛隊は自閉隊から脱却し、相互の連携をより具体化するプロセスを始めることが可能となります。自衛隊の災害医療に対する潜在的な能力を顕在化させるためにも、皆さんの御協力を願うところ大であります。

【石破茂関連サイト】
・国務大臣 防衛庁長官
http://www.kantei.go.jp/jp/koizumidaijin/020930/14isiba.html

・石破しげる　OFFICAL SITE
http://www.ishiba.com/

【石破茂：「武器輸出三原則の見直し」関連記事】
・asahi.com : ニュース特集：石破長官「政府で検討と言っていない」　三原則見直し
http://www.asahi.com/special/security/TKY200401160354.html

・中国新聞　社説：武器輸出三原則　「なし崩し」が心配だ
http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh04011501.html

Comments

[1. yag]

yagです。ご無沙汰です。

あまりに無知のように感じたので、昨日、上で紹介されているリンク「あたらしい自閉症の手引き」を防衛庁のメール経由で紹介してあげました。

[2. afcp]

こんばんはafcpです。
実はこの記事は僕も見たのですが、あまり問題にしてはいけないと思って、取り上げませんでした。理由は

1. 自衛隊を「自閉隊」と表現しているのはそもそも石破氏ではないこと。
Googleで「自閉隊」を検索するとずっと以前からのものと思われるページが、かなり引っかかってきます。主に２ちゃんねるがらみのようですが。つまり「自衛隊が自閉隊であると揶揄されている」ことは客観的事実です。彼は「自衛隊は世間でこのように批判されている。その意図はこれこれだ」と解説しただけで、そこに彼自身の自閉症理解は関係ないのではないでしょうか。自衛隊が世間でこのように表現されている現状を認識し、その意図を理解していることを示すことは、それこそ彼に求められるべき態度ではないでしょうか。

2. 彼が厚生労働大臣でも文部科学大臣でもないこと。
たかが防衛庁長官であるというだけで、精神科医の中でもさほど理解の進んでいない自閉症について、人並み以上の知識水準を求めるのは無理があります。政治家に超人的な知識量を期待するのは無い物ねだりです。僕は石破氏には自閉症に関する知識などより、自衛隊の飛行機の性能とかイラク情勢について少しでも多く勉強してもらいたいと思います。将来石破氏が、厚生労働大臣に就任することがあれば、その時初めて、「過去にこうした発現があった」として問題とすべきでしょう。

3. これがおそらくクローズドな場所での発現であること
これが不特定多数の人間に対して発言されたのであれば、カイパパさんの言われるように、問題のある発言と言えるでしょう。しかし特定の人間に対して発信された言葉であれば、その人々に対してのみ、発言の責任を負うのではないでしょうか。

個々の発言を文脈や社会的な背景、その人の置かれている立場、発言された場所などから切り離して批判するのはあまり良いことだとは思えません。揚げ足取りのような野党の反応こそ、自閉症に関係する人間の思いを、政争の具とし、いいように利用しているだけのようにも思われてなりません。

[3. カイパパ]

＞afcpさん

いつもお世話になっております。

石破長官はあっさりと謝罪をしました。
おそらく周りの人にいさめられたんだろうなと想像します。
本当に裏のない、単純に無知に基づく発言だったのでしょう。

図らずして、「世間一般の自閉症の認知度」をあからさまにしてくれた事件だと認識しています。

それよりも、afcpさんがコメントに書かれた

＞精神科医の中でもさほど理解の進んでいない自閉症について、

というくだりには、考え込んでしまいました。

自閉症＝水銀原因説について、親が必死になって学説の状況を整理して、TBSの番組の問題性を指摘しているのに、
精神科医などの「専門家」の不在を感じました（AFCPサイトは別）。
afcpさんのおっしゃることが事実だとすると、
そもそも自閉症について「心因説」をとる精神科医が多いということなのでしょうか？
そうだとしたら、TBS報道特集の問題性など指摘するなんて、そもそも大変な高望みだということなんでしょうか…

…うーん。

[4. afcp]

カイパパさん、こんばんは。

＞精神科医の中でもさほど理解の進んでいない自閉症について、
ちょっと誤解を産みそうな表現だったので補足を。

現在の精神科医で自閉症という障害自体や、それがいわゆる心因性疾患でないということを
知らない医師は、ごく少数であると思われます。
しかし児童を専門としない精神科医の間では、高機能例や特定不能の広汎性発達障害などの
近年の「自閉症」概念の広がりはなかなか理解されにくい、
あるいは理解はされても、成人例の診断になかなか結びつかないのが現状です。
このような意味で書かせていただきました。ちょっと舌足らずでしたね。

＞本当に裏のない、単純に無知に基づく発言だったのでしょう。
その通りだと思います。であるが故に専門家ではない彼を、それで責めるのは酷かと考えます。
確かに広汎性発達障害は非常に高頻度に見られる障害ですが、例えばうつ病、統合失調症などに
比べて決して、発病の確率が高いとは言えません。もっと言えば、頻度の低い疾患であれば
知らなくても良いという理屈も成り立たないでしょう。
すると政治家は何をどこまで知っていればならないのでしょうか。

知識を啓蒙していく方法には所詮限界があります。
世間に広く求めていくべきなのは、知識に基づく必要のない、
障害者や各種マイノリティーへの穏やかな受容と最低限の親切であると思います。
今回の石破氏の発言には、最初からあまり自閉症者に対する「悪意」は感じられませんでした。
それで良いのではないでしょうか。

もう一つ別の観点から考えてみます。
過去の経緯からも自閉症の心因説に対して、きちんと反論する必要があるのは確かですし、
心因説をとる人たちのために、ご家族が苦労されていることもよくわかります。

しかしあまり躍起になってそれを否定する姿を見るのは、
僕のように他の心因性の疾患の児童の治療にも当たっている人間にとっては、
心地よいことではありません。
心因性疾患を持つ子供の親御さんに対する配慮も、片隅に残しておいていただけると
嬉しく思います。

[5. カイパパ]

＞afcpさん

ご丁寧な反応ありがとうございます。

(1)
＞しかし児童を専門としない精神科医の間では、高機能例や特定不能の広汎性発達障害などの
近年の「自閉症」概念の広がりはなかなか理解されにくい、
あるいは理解はされても、成人例の診断になかなか結びつかないのが現状です。

★コメントの真意、了解しました。補足ありがとうございます。

(2)
＞心因性疾患を持つ子供の親御さんに対する配慮も、片隅に残しておいていただけると
嬉しく思います。

★このことは以前から気になっていました。このテーマでいつかオピニオン記事を書こうと考えていましたが、
「自閉症はひきこもりではない」とか
「自閉症は心因性疾患ではない」という説明をするたびに、
（ひきこもりや心因性疾患を差別する意図で言っているのではない）
（だからといって、ひきこもりや心因性疾患が深刻ではないと言うつもりはない）
と心の中で付け足しています。
じゃあ、どうして、「自閉症は心因性疾患ではない」と私は親の立場から繰り返すのかというと――

(1)以下のような偏見に対して、ちがうんだよと伝えたい
・過去の経緯から、「自閉症は〈冷蔵庫のように冷たい母親〉のせいでなる」→ゆえに、親から隔離して治療しなければならない
・同じく、「育て方の失敗が自閉症である」→親の自責の念、周囲の批判

(2)自閉症の人のQOL向上のためのアプローチが心因性疾患と異なる、と伝えたい
・心因性疾患の治療のためのアプローチ（カウンセリングなどが中心となるのでしょうか）と
自閉症の人がよりよい生活の質を保った生活をできるようにするためのアプローチは
異なる

この2点の趣旨からです。
決して、自閉症よりも心因性疾患のほうが問題が軽いとか、差別する意図ではありません。

原因を知って、周囲が適切な対応ができるようにしたいと思ってのことです。
（その意味では、私は心因性疾患の方への適切な対応についてよく知りません。
AFCPサイトなどで、色々と勉強させていただきたいと思っています。）

今回は、本当に大切なご指摘をありがとうございました。
私も心にひっかかっていたことを書くことができました。
感謝しています。

[6. 職業公務員]

石破氏が思って言ったことではなく、「自衛隊に対してこういう風に言う人が居る」という発言であるのだが・・・
他の自称平和団体の方々が似たような発言をしているのを私は知っていますが誰も何も言いませんね。やはり同じ穴の貉だからですか？

[7. カイパパ]

＞職業公務員さん

コメントありがとうございます。

「
石破氏が思って言ったことではなく、「自衛隊に対してこういう風に言う人が居る」という発言であるのだが・・・
」

承知しております。

私の記事本文でも、「自閉隊」は石破長官のオリジナルではないと例示をあげています。
また、コメントの中でのafcpさんとのやりとりもご覧になっていただければ幸いです。

私が問題としたかったことは、

「
一国の大臣が、誤解にもとづき、面白おかしいネタとして「自閉症」を持ち出す、この現実を直視しなければいけない
」

ということです。

石破氏が特別な差別偏見の持ち主だと思ってはいません（実際、石破氏は、この発言後速やかに謝罪しました）。
社会の多くの方が「自閉症」という障害を誤解している現実を直視して、私は、地道に自閉症の理解を広めていきたいと思っています。

今回の発言＆謝罪を経て、石破氏ご自身が毎日新聞のインタビューに答えて、「一人の政治家として（自閉症の理解を広げる）努力をしたい」と語っています。とてもうれしいことです。

【石破茂氏インタビュー記事】
・MSN-Mainichi INTERACTIVE　テレビ：発達障害に高まる関心
http://www.mainichi-msn.co.jp/geinou/tv/news/20040615dde012070021000c.html

まず、自閉症に関心を持っていただく
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――そのためのきっかけ作りをこのサイトができたらいいなと願っています。

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