■【光とともに】第2話:ママって呼ばれたい――ですか?
★はじめに〜第2話をきっかけに
ドラマ「光とともに…」第2話のクライマックスで、光君が写真カードを見ながら「マ……、マ」と発語するシーンがありました。
ジーンと来た方も多かったのでは?
カイパパ通信blog☆自閉症スペクタクルでは、ドラマをきっかけに、自分たちの体験や感じていることを語り、重ねていくことを目指しています。
・【あの頃】「わが子の障害がわかるまで」体験談募集
http://kaipapa.livedoor.biz/archives/387768.html
今回は、第2話をきっかけに、自閉症の人の「言葉」について考えてみます。
★はじめに〜第2話をきっかけに
ドラマ「光とともに…」第2話のクライマックスで、光君が写真カードを見ながら「マ……、マ」と発語するシーンがありました。
ジーンと来た方も多かったのでは?
カイパパ通信blog☆自閉症スペクタクルでは、ドラマをきっかけに、自分たちの体験や感じていることを語り、重ねていくことを目指しています。
・【あの頃】「わが子の障害がわかるまで」体験談募集
http://kaipapa.livedoor.biz/archives/387768.html
既に10名の方が書いてくれています。ぜひ読んでみて下さい。引き続き、体験談募集しています(私も、書かなくちゃ!)。体験をシェアしてみませんか?
今回は、第2話をきっかけに、自閉症の人の「言葉」について考えてみます。
★1 音声言語は、コミュニケーションで最も難しい
自閉症スペクラムは、脳の機能障害で認知のプロセスに障害があります。なかでも、目に見えない概念(たとえば言葉や時間、空間の意味など)を理解することが苦手です。
そのため、言葉(特に音声言語)を使いこなすことは、最も難しいことです。このことは、高機能自閉症の人でも共通していて、発語はあるけど適切な使い方ができないことが多い。
高機能の自閉症スペクトラム当事者も、著書の中で、音声言語は、映像や文字に置きなおして理解することを語っています。
(記事の最後に本の紹介があります)
・『ずっと普通になりたかった。』原題"A Real Person" グニダ・ガーランド
・『自閉症児の才能開発』原題"Thinking in Pictures" テンプル・グランディン
・『自閉症だったわたしへ』原題"Nobody Nowhere" ドナ・ウィリアムズ
ましてや、光君やうちのカイのように、発語の極めて少ないカナータイプの子どもたちにとって、音声言語をマスターすることは、本当に高いハードルです。
★2 言葉は、元から持っている贈り物
2002年夏に受けた、諏訪利明先生のセミナーでこんな質疑がありました。
「どうしたら、言葉が出るようになるのか?」の質問に対して諏訪先生は、
「わかりません。○○をしたから言葉が出てくるようになる――とは私には言えません。ただ、言葉は、その子が元から持っている贈り物のようにとらえた方がいいんじゃないかと思います。話し出す子は、時期が来たら話し出します」
冷たく聞こえるかもしれません。
でも、そのセミナーで「コミュニケーションは音声言語によるものばかりではない」と学んだ後では「そうだよな、自閉症の人が一番苦手な音声言語でのコミュニケーション(ばかり)を求めるのは、酷だよな」と自然に納得しました。
★3 ママって呼ばれたいですか?
妻に聞いてみました。「カイ君にママって呼ばれたい?」
少し考えて、
「うーん、どっちでもいいかな」と妻。
「だって、”ママ”って言葉で言われなくても、カイ君はたくさん”ママ”って呼んでくれているから」
ドラマ「光とともに…」第2話の中で、里緒先生(小林聡美)が言います。反復練習で、音として「ママ」と言わせても、「ママの存在」と結びつかなければ意味はない、と。
もちろん、カイとかんたんなお話のやりとりができるようになったらいいなとは思っています。でも、そのために「ことばを叩き出す」みたいなことはしたくないです。
今は、「実物でのやりとり」の練習をしているところです。
私は「パパ」って呼ばれたいかって? 私は、もうカイから呼ばれまくってますから。
「パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ……」
↑エンドレスなかけ声。機嫌のよいときに甲高く連呼されます。たぶん音が気に入っているのでしょう。「パパ」という意味はないと思われます、わかりませんけど。
十分です(^^;
【高機能自閉症・アスペルガー症候群の本人が書いた本】
高機能自閉症・アスペルガー症候群の本人の発言は、自閉症スペクトラムとメインストリームの人々とつなぐ「失われた環(ミッシング・リンク)」です。この人たちを通して、カナータイプの自閉症児の内面も想像することができます。
おすすめ本を紹介します。
自閉症の才能開発―自閉症と天才をつなぐ環
邦題はヒドイですが、原題"Thinking in Pictures"(映像で思考する)のとおり、視覚優位の自閉症スペクトラムの特性がよく伝わってきます。この本は、自伝というより、本人の書いたとてもわかりやすい自閉症理解の入門書ですね。必読です。
グランディンさんには、他に『我、自閉症に生まれて』があります。
自閉症だったわたしへ
親からの虐待も克明に記録されています(TT) この本を読んだだけでは、ウィリアムズさんは「母親からの虐待が原因で自閉症になったのでは」と誤解する人もいるかもしれません。文章も明晰ですし。
私は、ウィリアムズさんのTVドキュメンタリを見ました。そこで初めて、自閉症スペクトラムであるということは、はっきりと理解できました。文章だけでは誤ったイメージをもってしまう可能性を意識しました。
・ドナ・ウィリアムズ公式サイト(英語)
http://www.donnawilliams.net/
続編があります。
自閉症だったわたしへ〈2〉
ドナの結婚―自閉症だったわたしへ
ずっと「普通」になりたかった。
この本の訳者は、アスペルガー症候群の本人であるニキ・リンコさんです。邦題を見るだけで、切なくなります……。
・二キ・リンコさんのサイト:自閉連邦在地球領事館附属図書館
http://member.nifty.ne.jp/unifedaut/index.htm
すごいサイトです。いつも勉強させてもらっています。
ちなみに、グランディンさんはアメリカ人、ウィリアムズさんはオーストラリア人、ガーランドさんはスウェーデン人です。
日本人の高機能自閉症の本人が書かれた本もあります。
変光星―自閉の少女に見えていた世界
平行線―ある自閉症者の青年期の回想
日本の学校でのいじめの陰湿さに、落ち込んでしまいます……。
・森口奈緒美さんのサイト:自閉症納言
http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Cassiopeia/8331/
自閉症スペクラムは、脳の機能障害で認知のプロセスに障害があります。なかでも、目に見えない概念(たとえば言葉や時間、空間の意味など)を理解することが苦手です。
そのため、言葉(特に音声言語)を使いこなすことは、最も難しいことです。このことは、高機能自閉症の人でも共通していて、発語はあるけど適切な使い方ができないことが多い。
高機能の自閉症スペクトラム当事者も、著書の中で、音声言語は、映像や文字に置きなおして理解することを語っています。
(記事の最後に本の紹介があります)
・『ずっと普通になりたかった。』原題"A Real Person" グニダ・ガーランド
でも私の場合、言葉で説明を聞いても、頭の中で絵にならなければ、どこかへ飛んでいってしまう。あるいは、単に言葉としてだけ意識に残り、"構造の面白さ"や"語感"を味わうだけで終わってしまう。いろいろな言葉の中には、色がすてきなものや、発音が心地よいものもあるが、"絵"が思い浮かばない限り、意味にはならないのだ。(23ページ)
・『自閉症児の才能開発』原題"Thinking in Pictures" テンプル・グランディン
絵で考えるのが私のやり方である。言葉は私にとって第二言語のようなものなので、私は話し言葉や文字を、音声つきのカラー映画に翻訳して、ヴィデオを見るように、その内容を頭の中で追っていく。誰かに話しかけられると、その言葉は即座に絵に変化する。言語で考える人たちにとって、これは理解しがたい現象であろう。(20ぺージ)
自閉症者たちは、絵にして考えることのできないものを学習するのは難しい。自閉症児がもっとも簡単に覚えることができるのは、絵に直接結びつくような名詞である。(31ページ)
・『自閉症だったわたしへ』原題"Nobody Nowhere" ドナ・ウィリアムズ
先生に指されて教科書を読むのも上手だった。…だが字面はすらすらと読めたものの、読みながら内容をつかむということはできず、内容はいつも挿絵から理解していた。わたしは発音をまちがえようが文字や単語を少々ひっくり返そうが、いつも自信満々で読み続けた。(47ページ)
確かに言語はシンボルであるが、ではわたしがシンボルというものを理解していなかったかというとそれも違う。わたしにはちゃんと、わたしだけの話し方のシステムがあって、それこそが「わたしの言語」だったのである。周りの人々こそそういったわたしのシンボリズムを理解していなかったのだし、そんな人々に対して、どうやってわたしの言いたいことを説明したらよかったというのだろう。(51ページ)
…わたしも読むことは好きだったが、特に好きだったのは、電話帳と街の案内書だった。
ところが学校の教材の小説となると、わたしには何ひとつわかっていなかったのである。次第にわたしは、自分でそれに気づくようになった。読むことは読めるのだが、その内容がつかめない。内容はひとつひとつのことばの群れの中に、吸い込まれて消えていってしまうかのようだった。(68ページ)
ましてや、光君やうちのカイのように、発語の極めて少ないカナータイプの子どもたちにとって、音声言語をマスターすることは、本当に高いハードルです。
★2 言葉は、元から持っている贈り物
2002年夏に受けた、諏訪利明先生のセミナーでこんな質疑がありました。
「どうしたら、言葉が出るようになるのか?」の質問に対して諏訪先生は、
「わかりません。○○をしたから言葉が出てくるようになる――とは私には言えません。ただ、言葉は、その子が元から持っている贈り物のようにとらえた方がいいんじゃないかと思います。話し出す子は、時期が来たら話し出します」
冷たく聞こえるかもしれません。
でも、そのセミナーで「コミュニケーションは音声言語によるものばかりではない」と学んだ後では「そうだよな、自閉症の人が一番苦手な音声言語でのコミュニケーション(ばかり)を求めるのは、酷だよな」と自然に納得しました。
★3 ママって呼ばれたいですか?
妻に聞いてみました。「カイ君にママって呼ばれたい?」
少し考えて、
「うーん、どっちでもいいかな」と妻。
「だって、”ママ”って言葉で言われなくても、カイ君はたくさん”ママ”って呼んでくれているから」
ドラマ「光とともに…」第2話の中で、里緒先生(小林聡美)が言います。反復練習で、音として「ママ」と言わせても、「ママの存在」と結びつかなければ意味はない、と。
もちろん、カイとかんたんなお話のやりとりができるようになったらいいなとは思っています。でも、そのために「ことばを叩き出す」みたいなことはしたくないです。
今は、「実物でのやりとり」の練習をしているところです。
私は「パパ」って呼ばれたいかって? 私は、もうカイから呼ばれまくってますから。
「パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ……」
↑エンドレスなかけ声。機嫌のよいときに甲高く連呼されます。たぶん音が気に入っているのでしょう。「パパ」という意味はないと思われます、わかりませんけど。
十分です(^^;
【高機能自閉症・アスペルガー症候群の本人が書いた本】
高機能自閉症・アスペルガー症候群の本人の発言は、自閉症スペクトラムとメインストリームの人々とつなぐ「失われた環(ミッシング・リンク)」です。この人たちを通して、カナータイプの自閉症児の内面も想像することができます。
おすすめ本を紹介します。
自閉症の才能開発―自閉症と天才をつなぐ環
邦題はヒドイですが、原題"Thinking in Pictures"(映像で思考する)のとおり、視覚優位の自閉症スペクトラムの特性がよく伝わってきます。この本は、自伝というより、本人の書いたとてもわかりやすい自閉症理解の入門書ですね。必読です。
グランディンさんには、他に『我、自閉症に生まれて』があります。
自閉症だったわたしへ
親からの虐待も克明に記録されています(TT) この本を読んだだけでは、ウィリアムズさんは「母親からの虐待が原因で自閉症になったのでは」と誤解する人もいるかもしれません。文章も明晰ですし。
私は、ウィリアムズさんのTVドキュメンタリを見ました。そこで初めて、自閉症スペクトラムであるということは、はっきりと理解できました。文章だけでは誤ったイメージをもってしまう可能性を意識しました。
・ドナ・ウィリアムズ公式サイト(英語)
http://www.donnawilliams.net/
続編があります。
自閉症だったわたしへ〈2〉
ドナの結婚―自閉症だったわたしへ
ずっと「普通」になりたかった。
この本の訳者は、アスペルガー症候群の本人であるニキ・リンコさんです。邦題を見るだけで、切なくなります……。
・二キ・リンコさんのサイト:自閉連邦在地球領事館附属図書館
http://member.nifty.ne.jp/unifedaut/index.htm
すごいサイトです。いつも勉強させてもらっています。
ちなみに、グランディンさんはアメリカ人、ウィリアムズさんはオーストラリア人、ガーランドさんはスウェーデン人です。
日本人の高機能自閉症の本人が書かれた本もあります。
変光星―自閉の少女に見えていた世界
平行線―ある自閉症者の青年期の回想
日本の学校でのいじめの陰湿さに、落ち込んでしまいます……。
・森口奈緒美さんのサイト:自閉症納言
http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Cassiopeia/8331/
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