■【追悼】橋本龍太郎・元発達障害の支援を考える議員連盟会長

 7月1日に、橋本龍太郎・元発達障害の支援を考える議員連盟会長がお亡くなりになりました。政治家として、様々な功罪があったかと思いますが、私にとっては、発達障害者支援法の成立にご尽力してくださった恩人です。

 厚生労働省に対して発言力を持つ、橋本さんが、発達障害の支援を考える議員連盟の会長に就任して立法を推進してくれたことはとても大きかったと思います。

 また、カイパパ通信blog☆自閉症スペクタクルで展開した、議員にお手紙を送る発達障害者支援法成立キャンペーンに応えて、橋本さん自らがご返事をくださったことに、どれだけ励まされたかわかりません。

ぼくらの発達障害者支援法P.26より引用
★橋本龍太郎議員連盟会長から、ご返事をいただきました!
 カイパパ殿、メール拝見しました。2歳半の折の診断、現在4歳、淡々と描いておられる裏側を考え、心から頭が下がります。この問題は超党派の若い議員の皆さんが自発的に動き出した話です。貴方も手伝ってよ!と声をかけられ喜んで仲間入りさせてもらいました。立法技術的には難しい法律、会期も後二日、できるだけの準備をこの間に仕上げておこうとみんな一生懸命です。これからも気が付いたことがあったら遠慮なくメールください。ありがとうございました。
 私の送ったメールに目を通してくださり、寄り添って共感を示してくださったことが胸にしみました。何よりも、「これからも気がついたことがあったら遠慮なくメールください」のひと言。もしかしたら政治家としての決まり文句なのかもしれませんが、お互いを別世界の人と無視するのではなく、きちんとした意見の交換をしていけるんだなと、信じてみたくなりました。
・過去記事はこちら:【支援法】成立へ向けて始動(2004年06月21日)
http://kaipapa.livedoor.biz/archives/2079519.html

 橋本龍太郎さんが、「なぜ」発達障害者支援法の立法に関わろうと思われたのか?について、『発達障害者支援法と今後の取組み』(発達障害の支援を考える議員連盟 編)の巻頭言に思いがつづられています。

発達障害者支援法と今後の取組み巻頭言より引用(太字は引用者)
(略) 私の父親橋本龍伍は、小学4年生の時に結核性の腰椎カリエスにかかり生涯左足が不自由でした。今のように社会保障制度も整っておらず医学も発達していない時代を行き続けた父親はよく「はじめは不具である事を何とか忘れようと努めたが、それが駄目だった。そこでむしろ自分の不具を正面から認識することによって、不具であるという現実を意識の平面上にならしてしまおうと考えた。忘れたわけではない、しかし取り立てて思い出す事もない、という状態になろうとして、どうにか今はそれに成功した。」と、口癖のように申しておりました。父親はハンディキャップを正面から見据えようという強さを何時も持ち続けながら生活をしておりました。
そんな父親の突然の死後、あとを継ぐ形で私は政治家となり昭和38年の初当選以来、ごく自然な形で障害者分野を含む厚生省関係の仕事を自分のライフワークとして今日まで続けてまいりました。(略)

 昭和45年には、これも議員立法でしたが心身障害者対策基本法をまとめ、今この法律はその後の社会情勢の変化の中で、新たに障害者基本法へと衣替えをしております。
しかし当時の福祉行政における施設中心主義は我々の盲点でもありました。ハンディキャップのある人は施設に収容し、そこで手厚く保護することが一番良い方策であると考えられていたからです。かくあるべしとして実施したその施策は、施設の中に実際入っている障害者の人々のしあわせに繋がってはいなかったのです。
発達障害者も含めこれらの障害者は、一般への理解が少なく地域支援も少ないのが現状です。(略)

 法案には、必ずと言ってよいほど附則事項に数年後の見直し(法律改正)と記載されております。これは法律施行後記載された期間中にどのような問題が起こったかを検証し、そして必要に応じて附則事項記載年数を過ぎた後に見直しをするものです。
発達障害者支援法も発達障害の症状を適切に診断できる医師や専門家の不足、地域での支援体制の不十分さ、支援センターの全国的設置の必要性や関係機関の連携等、今後の課題は山積しております。
我々国会議員は法律を作る事で終わるのではありません。むしろ、これからが始まりなのです。今後、法律的にも様々な問題が生じてくるかも知れません。
その為にも我々「発達障害の支援を考える議員連盟」は継続してこの法律を見守る事としております。皆様からのご意見を取り入れ今後も出来る限りの支援を続けていく次第であります。「政治は弱者のために」この言葉を胸に我々はこれからも皆様のご期待に沿うべく、鋭意まい進する覚悟でおります。(略)
 橋本さんのお言葉のとおり、「発達障害の支援を考える議員連盟」は発足当初の46名から、現在では142名と参加議員も増えています(平成18年4月17日現在の名簿←PDFです)。
 また、厚生労働省では、「発達障害対策戦略推進本部」を立ち上げ、部局横断型の施策を講じようとしています。(参考記事:日本経済新聞2006年6月23日:発達障害者対策、推進本部を発足・厚労省が横断組織

 静かですが、確実に、発達障害者を取り巻く状況は良い方向に進み続けています。

 橋本先生、ありがとうございました。