映画「幸せの太鼓を響かせて〜INCLUSION〜」を観てきました。

ドキュメンタリーです。生身の人間に密着した撮影をしています。

太鼓が凄い。

でも、映画の中で、少年刑務所の受刑者からの感想文にもあったように、年間130公演もこなし、プロとしてお金を稼いでいる人たちに対して、「すごい」とか「上手い」とか言うのは失礼な気がしますね。
子どもの頃から練習を積んで、技術を磨いてきて今があるのだな、と尊敬します。

映画は途中から、瑞宝太鼓(グループ名)のリーダー河本さんのお子さん、四歳のゆうき君にフォーカスが置かれていきます。
それは、監督が、映画を撮り始めた最初からの意図ではなかったんじゃないかな?と私は想像します。
瑞宝太鼓を取材していくうちに、カメラがぐんぐんとゆうき君に近づいていく──印象を受けました。

知的障害のある両親から生まれた子──発達が気になる子。
本人はいたって明るく元気いっぱい!
両親の努力、優しさ。見守る周囲の人々のまなざし。

保育園の保育士さん、発達支援のSTさんやOTさんたちは、共通した表情をしていました。

ゆうき君がこれからどれだけ発達をしていくのかわからないけど、自分たちにできる支援をやれるだけやろう。
容易ならざる道を想像はしてしまう。けれど、幸せを祈ってやまない。
──そう語っているようでした。

知的障害のある両親による子育て。とても「特別なこと」に思える。
でも、きっと誰もが、一度しかない人生を、薄氷を踏むような思いをしながら前に進んでいることは同じだ。
たくさんのひとに、支えられて生きていることも。






ああ、これは。

コロニー雲仙解体後、施設を出て、「ふつうの場所で、ふつうの暮らしを」するようになって、今どうしているか?を活写した映画なんだ。
──ということに、エンドタイトルで「田島良昭」さんの名前を見て、やっとはっきり気づきました。

「INCLUSION」のサブタイトルは、その意味が(も)込められているのか…

田島良昭さんはこういうかたです。↓
ふつうの場所でふつうの暮らしを―コロニー雲仙の挑戦〈1〉くらす篇 (コロニー雲仙の挑戦 (1 くらす篇))
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たのしく働き、いきいき暮らす―コロニー雲仙の挑戦〈2〉はたらく篇 (コロニー雲仙の挑戦 (2 はたらく篇))
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驚いたことに、私は、この映画の主人公である岩本友広さんに既に出会っていました。
平成16年3月、やはり私たちが親になっている岩本友広君という、彼はプロの和太鼓集団「瑞宝太鼓」の団長なのですが、彼が10年間恋愛して、結婚しました。
田島良昭著『施設解体宣言から福祉改革へ』P.19から引用。

今、本をパラパラ見ていて気が付きました。7年前にぶどう社の市毛さんからいただいた本です。


この映画は、「知的障害者の太鼓グループの感動物語」として観ることももちろんできますが、観ればきっと気づきます。
ものすごく、様々な、生きることの喜びや悩みやつまずきや、ひとの優しさや強さやかなしみをつつみこんでいるんです。
テーマはしぼりこまれていません。観るひとによって、感じることは違うでしょう。(私のこの感想記事も、著名人のコメントと比べると、あまりにも違っていて、「あれ?」とセルフつっこみしたくなります。)

でも、それは、現実の暮らしに、個々の人間に密着しているからですね。「テーマ」に沿って生きているわけではないもの。

以上が、映画の感想です。




でも、極私的なことを言うと──映画の最初から最後まで、「うちの子の知的障害は重いんだ…」と思い続けて観ていました。

あらためて、愕然としました。