■愛知県社会福祉審議会:コロニーのあり方検討開始

★コロニーのあり方調査研究会議を設置

 2004年4月26日記事「愛知県コロニーの見直しを諮問 県知事会見」でとりあげた愛知県心身障害者コロニー(コロニー)のあり方に関する検討が、4月28日、愛知県社会福祉審議会で始まりました。愛知県知事の諮問を受けてのものです。
 審議会内に調査研究会議を設置し、2004年秋をめどに中間報告を審議会に提出。年度内に審議会が県知事に対して答申のスケジュールです。

・中日新聞(愛知県内版)2004年4月29日:県社会福審に会議設置――県心身障害者コロニー施設のあり方検討
 県社会福祉審議会(委員長・大沢勝県社会福祉協議会副会長)が28日、名古屋市の県自治センターで開かれ、県心身障害者コロニー(春日井市神屋町)のあり方に関する神田真秋知事の諮問を受け、審議会内に調査研究会議を設置することを決めた。
 同コロニーは1968年6月に開所。県内の障害者福祉の中核的な役割を担ってきたが、施設利用者の高齢化、入所期間の長期化、症状の重度化が進み、近年の福祉施策で重視されている地域療育や地域生活の充実が滞るなどの問題点が指摘されていた。
 調査研究会議は、同コロニーだけでなく、地域療育が可能となる県内全域での施設整備や社会復帰のための職業訓練など検討事項が多岐にわたり、専門性も高いため設けることになり、医療、福祉、有識者、NPO(民間非営利団体)などの専門家で構成する。同会議が今秋をめどに中間報告を審議会に提出。修正点を協議したうえ、年度内の答申を目指す。

★カイパパの注目ポイント

(1)疑問――本人委員は入れないの?
 多様な専門家を委員に加えることはよいでしょう。しかし、本人のことは本人が一番よく知っている。

「わたしたちのことをわたしたちがいないところで、決めないで!」

 この訴えに対して、愛知県は答えられるのでしょうか?

「知的障害者は自己決定ができない」と決め付けて、「だから専門家が代わって、本人にとって何がいいかを決める」というのは横暴です。意思決定への関与と選択の自由を認めて欲しい。

 ――「せめて、親の立場の委員を」と言いたいところですが、「親の利害と本人の利害は対立する(こともある)」という事実を決して忘れてはいけません。本人は本人、親は親の立場で参加すべきでしょう。

 少数の「専門家」で、コロニーのあり方を決めていくことは、今後どのような方向性を選ぶにしても意思決定の過程に「本人参加」「住民参加」がないために禍根を残すことになります。慎重な人選を望みます。

(2)「あり方の検討=施設から地域へ」ではない?

カイパパ通信blog☆自閉症スペクタクル:愛知県コロニーの見直しを諮問 県知事会見
 答申についての予想ですが、現在の流れからすると「施設入所から地域生活支援へ」という方向性が出てくるのは間違いがないと思われます。国の施策が転換していますから。
 神田知事の決断は、愛知の障害者福祉を変える歴史的なものとなるかもしれません。注目しましょう。

 と私は書きましたが、神田知事自身は「施設が不要になるわけではないが、社会生活の中で心身障害者が生活できる環境づくりが課題だ」(朝日新聞2004年4月20日報道)と語っています。
 検討会の人選方針を見て、必ずしも「地域へ」大きな舵を切る決断にはならないかもしれないと思い始めました。

 というのも、堂本暁子千葉県知事の厚生労働省社会保障審議会障害者部会での発言を読んで、地方自治体の長の一般的な感覚を垣間見た気がしたからです。

・社会保障審議会障害者部会(第6回)(2004年3月17日開催) 議事録
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/03/txt/s0317-1.txt

【堂本委員発言】
(略)私ども千葉県では、誰もがありのまま、その人らしく地域で暮らすことができる新たな地域福祉像を提唱しております。
 しかしそのことの阻害要因としてなっているのは、まだ非常に縦割りでございます。
3障害の間の縦割り、高齢者との間の縦割りで、それが一つの小さな村とか町に下りた場合に、個別にそういうことの生活的なサービスができないということがひとつございます。
 もう一つは、いま北岡委員がいわれたように、千葉ではとても施設解体という宣言はできません。なぜならまだ知的障害の方は袖ヶ浦に500人のコロニーがあるわけです。
その500人の方が地域に戻れるような地域でのサービスが作れるのかというと、これはほとんど不可能です

 ですので、そのためにはもう少し入所と居宅という二者択一ではなく、どうしても居宅で試みたが、それができない場合にはまた入所するとか、それから自分の体調ということもあると思います。いろいろな形でそこにいろいろな選択肢がもう少し自由に入ってくる。その意味では中央からは大変に縦になっている。そして補助金の使い方というものも縦割りになっている。
(略)


 袖ヶ浦福祉センターの知的障害者500人が地域に戻れるような地域でのサービスは作ることはほとんど不可能――だそうです。

・千葉県社会福祉事業団 概要:袖ヶ浦福祉センター
http://www1.ttcn.ne.jp/~fukushi.or.chiba/gaiyou/gaiyou.html

 堂本知事は、県の障害者計画策定のプロセスへの当事者や県民の意見反映に本気で取り組んでおり、私も評価しています。その方でさえ、「地域移行は不可能」と本音で言ってしまう。これが現実なのかもしれません。

 いやいや言葉尻に反応してはいけない。堂本知事は「施設は全廃できない。シェルターあるいは訓練の場としての機能が残る」と言いたかったのかもしれない。それなら私も同じ意見です。発言の真意がそこにあると願いたい。

 果たして、神田愛知県知事はどのようなリーダーシップを発揮するのか(しないのか)注目し、私も意見を伝えていきたいと思います。

【参考】
・第三次千葉県障害者計画骨子案について
http://www.pref.chiba.jp/syozoku/c_syoufuku/keikaku/0213kotusi.html
2.経緯
 (1) 作業部会での議論
・「健康福祉千葉方式」に基づき、昨年8月、計画を策定するための「作業部会」を設置。これまで15回開催。

当事者の参加が多いのが特徴(23名の部会委員のうち5名、22名のヒアリング対象者のうち11名)

・会議自体を公開するとともに、県庁HPに議事概要を掲載し、広く議論を公開。