■【支援法】なぜ発達障害者支援法が必要なのか?
〜発達障害者支援法成立キャンペーン第5弾!
※発達障害者支援法成立キャンペーン関連記事はすべて転載自由です※
★キャンペーンの説明
キャンペーンの趣旨はこちらをご覧ください!
自閉症をはじめとする発達障害に対する支援を国、地方自治体の責務と定める日本初の法律、発達障害者支援法の今国会での成立が危ぶまれています。
「発達障害の支援を考える議員連盟」の議員の方々に応援のメッセージを届けましょう。
【議員の住所・メールのあて先】
・ひなっぺた通信: ■発達障害者支援法成立を!
http://popo.seesaa.net/article/189061.html ←こちらで検索できます!
★よーく考えよう〜なぜ発達障害者支援法が必要なのか?
杉山登志郎先生(あいち小児保健医療総合センター)と辻井正次先生(中京大学)が連名でマスコミ各社に提供された資料を掲載します。
〜発達障害者支援法成立キャンペーン第5弾!
※発達障害者支援法成立キャンペーン関連記事はすべて転載自由です※
★キャンペーンの説明
キャンペーンの趣旨はこちらをご覧ください!
自閉症をはじめとする発達障害に対する支援を国、地方自治体の責務と定める日本初の法律、発達障害者支援法の今国会での成立が危ぶまれています。
「発達障害の支援を考える議員連盟」の議員の方々に応援のメッセージを届けましょう。
【議員の住所・メールのあて先】
・ひなっぺた通信: ■発達障害者支援法成立を!
http://popo.seesaa.net/article/189061.html ←こちらで検索できます!
★よーく考えよう〜なぜ発達障害者支援法が必要なのか?
杉山登志郎先生(あいち小児保健医療総合センター)と辻井正次先生(中京大学)が連名でマスコミ各社に提供された資料を掲載します。
杉山先生、辻井先生は、高機能自閉症の女性を主人公に描いたTBSドラマ「君が教えてくれたこと」(ともさかりえ主演)の監修者としても有名。またNPOアスペ・エルデの会においても長期的な視野に立った発達障害者への支援に取り組んでいます。
・TBSドラマ「君が教えてくれたこと」:お二人の略歴
http://www.tbs.co.jp/kimioshi/autism/autism-tec.html
※この資料の本サイトへの転載は辻井先生から許可をいただいています。
同時に、この資料は、出典を明らかにし改変を加えない限り、転載自由との許可もいただいています。みなさまもどうぞご活用ください。
16.5.19 マスコミ用資料
■発達障害者支援法の意義と必要性
あいち小児保健医療総合センター 杉山登志郎
中京大学社会学部 辻井正次
本日、発達障害の支援を考える議員連盟設立を迎えることは、発達障害児者の実際の支援を進めていくうえで、非常に画期的なことである。
障害者福祉・支援の理念として、できないことを補償する意味合いだけではなく、「すべての人が正しい理解をもつこと」「早期からの生涯にわたる一貫した支援を社会が行うこと」「福祉や教育等の関係者だけでなく、地域に住むすべての人の協力があること」で、多くの発達障害者が社会的に自立し、納税者になり、自分の人生を自己選択できるという、障害者支援の新しい視点をもたらすものである。「継続的な支援は、社会的自立のためのチャンスを提供することである」という、社会のコンセンサスを形成していくことにつながるであろう。
発達障害者支援法が成立することの意義として、具体的には以下のような点があげられる。
1.発達障害に対する啓発と理解の促進
発達障害というのは、生来の脳の機能障害などによって生じた障害を指し、自閉症・アスペルガー症候群などの広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥/多動性障害等を含む。
これらの障害の発症頻度は非常に高く、今までの実証データを総合すると、おおよそ人口の10%という推計値になる。従来の障害者福祉施策では、こうした発達障害児者を対象とはしてこなかった。発達障害児者は支援の網の目から漏れた存在であった。これまでしばしば育て方の問題と言われてきたことを考えれば、今回、これらの発達障害を、障害として位置づけ、必要な支援を行うことで、多くの人たちの社会的自立と幸福に寄与することになる。また、こうした障害が社会的に知られ、認知されていくことで、各々の人がもつ個性というものを広く認め合えるバリア・フリーな社会に近づいていくことができると確信する。
2.現状の発達障害児者の置かれている状況
現在、発達障害児者の支援は非常に不十分な状況に置かれている。特に、自閉症・アスペルガー症候群では、生来の社会性の障害のために、生涯にわたる支援が必要にもかかわらず、特に知的能力が正常な場合に、障害者福祉制度の枠組みから外れており、必要な支援がなされなかった。発達早期から乳幼児健診で発見し、早期の療育につなげて、本人なりの支援をしていけば、企業に就労し、社会的に自立できるのに、必要な支援がなされず、二次的なさまざまな障害を合併し、自立を遠ざけていた。
現状の実証的なデータでは、児童虐待の半数以上に何らかの発達障害が見られ、育てにくい子どもであることから虐待のハイリスク群ともなっていることが明らかになっている。また、学齢期以降についても、不登校の3分の1は発達障害児であり、必要な細やかな支援がなされないことで、不登校にいたっていることも明らかになっている。注意欠陥/多動性障害が未治療のままの場合、5割に行為障害(非行)へ移行するリスクがあることも実証的に示されている。また、成人期の「ひきこもり」と総称される社会的不適応のなかにも、発達障害者が含まれている。従来、対応がうまくなされないことで二次的な問題を起こし、社会問題化してからしか対応がなされなかったと言える。その最悪の例が、全体としては極めて稀なものだが、長崎幼児殺害事件などの犯罪例である。
反対に、われわれの継続的な支援の中では、知的障害のない発達障害を持つ青年たちの80%以上が企業への就労を経験できるようになるなど、支援によって納税者になることができる人たちであることも明らかになっている。
3.早期発見と早期からの支援の有効性
発達障害についての正しい理解が広がり、母子保健の専門家の研修ができれば、乳幼児健診で早期発見が可能になり、早期からの支援(療育) が可能になる。こうした社会性の側面でのチェックが可能になることは、児童虐待の予防ともなる。早期療育を受けた場合とそうでない場合とでは、学齢期以降の適応状況が明らかに異なり、障害に対応した支援を受けない場合に、さまざまな悪循環を重ねていく危険性が高まる。発達障害者支援法のなかで、発達障害が位置づけられることで、早期からの支援が可能になる。
4.特別支援教育の推進による社会的自立能力の育成
学校教育においても、特別支援教育の推進によって、教師の専門性が向上し、正しい指導ができるようになれば、学籍を普通学級におきながら、障害特性や学習障害など子どものニーズにそった個別教育プログラムによって、子どものもっている潜在的な可能性を引き出し、自立に向けた指導が可能になる。理解ない環境で十分な学習指導ができず、いじめられたり、対人関係での傷つきが重なったりすると自己評価が低下し、適応状況が悪くなる。特別支援教育の意義を発達障害児者の生涯発達の中で意味づける上でも、発達障害者支援法は重要な契機となる。
5.障害者雇用制度のさらなる推進による社会的に自立できる青年・成人の育成
発達障害児者について、本人の障害特性と必要度に応じて、ジョブ・コーチ等の障害者雇用制度を利用していくことで、企業就労できる青年が増加し、早期から十分な支援をしていくことで納税者を育成することができれば、本人の充実した社会生活の上でも、社会的にも望ましい。現在、支援が十分に行えていない発達障害児者を発達障害者支援法で対象を明記することで実際的な就労支援が可能になることを期待している。
6.地域生活の充実
知的障害の重複している場合も含め、障害特性にそった支援が地域に存在することで、幼児期から成人期までにわたる一貫した地域での生活が可能になる。精神科疾患を合併した場合も含め、地域でのデイケアなど、支援の受け皿を作っていくうえで、発達障害者支援法はその根拠を示すという意味で重要なきっかけとなる。
7.発達障害者の人権擁護の必要性
消費者被害や犯罪被害にあう発達障害者が非常に多く、対応が緊急の課題となっている。発達障害への理解が進み、人権を尊重し、当事者の主体的な選択をもとに、必要な対応が迅速にできるようになることが望まれる。発達障害者支援法で、守るべき対象が明確になることで実際の支援が可能になることが期待できる。この発達障害者支援法は、従来の縦割り行政から脱し、部局横断的に、福祉、医療、教育だけでなく、労働、司法、警察、消費生活等の、発達障害者が生きていく上で関係する部局が協力して支援することを明確にしている点で、画期的な法律である。
8.発達障害に関わる専門性の向上と専門家の育成の必要性
現在、わが国は先進国で唯一、児童精神医学の独立講座を持たず、専門家の育成を怠ってきた。また、発達障害児者の専門病棟が非常に少ない、あるいは注意欠陥/多動性障害への治療薬の認可も遅れるなど、貧困な医療体制であった。こうした状況を改善し、関連領域も含め、医療、保健、福祉、教育等の専門家を育成し、専門性を向上していくことで、多くの人たちの幸福につながる。専門家を育成するシステムを構築する上で、発達障害者支援法は、現状を改善する大きなきっかけとなることが期待される。
・TBSドラマ「君が教えてくれたこと」:お二人の略歴
http://www.tbs.co.jp/kimioshi/autism/autism-tec.html
※この資料の本サイトへの転載は辻井先生から許可をいただいています。
同時に、この資料は、出典を明らかにし改変を加えない限り、転載自由との許可もいただいています。みなさまもどうぞご活用ください。
16.5.19 マスコミ用資料
■発達障害者支援法の意義と必要性
あいち小児保健医療総合センター 杉山登志郎
中京大学社会学部 辻井正次
本日、発達障害の支援を考える議員連盟設立を迎えることは、発達障害児者の実際の支援を進めていくうえで、非常に画期的なことである。
障害者福祉・支援の理念として、できないことを補償する意味合いだけではなく、「すべての人が正しい理解をもつこと」「早期からの生涯にわたる一貫した支援を社会が行うこと」「福祉や教育等の関係者だけでなく、地域に住むすべての人の協力があること」で、多くの発達障害者が社会的に自立し、納税者になり、自分の人生を自己選択できるという、障害者支援の新しい視点をもたらすものである。「継続的な支援は、社会的自立のためのチャンスを提供することである」という、社会のコンセンサスを形成していくことにつながるであろう。
発達障害者支援法が成立することの意義として、具体的には以下のような点があげられる。
1.発達障害に対する啓発と理解の促進
発達障害というのは、生来の脳の機能障害などによって生じた障害を指し、自閉症・アスペルガー症候群などの広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥/多動性障害等を含む。
これらの障害の発症頻度は非常に高く、今までの実証データを総合すると、おおよそ人口の10%という推計値になる。従来の障害者福祉施策では、こうした発達障害児者を対象とはしてこなかった。発達障害児者は支援の網の目から漏れた存在であった。これまでしばしば育て方の問題と言われてきたことを考えれば、今回、これらの発達障害を、障害として位置づけ、必要な支援を行うことで、多くの人たちの社会的自立と幸福に寄与することになる。また、こうした障害が社会的に知られ、認知されていくことで、各々の人がもつ個性というものを広く認め合えるバリア・フリーな社会に近づいていくことができると確信する。
2.現状の発達障害児者の置かれている状況
現在、発達障害児者の支援は非常に不十分な状況に置かれている。特に、自閉症・アスペルガー症候群では、生来の社会性の障害のために、生涯にわたる支援が必要にもかかわらず、特に知的能力が正常な場合に、障害者福祉制度の枠組みから外れており、必要な支援がなされなかった。発達早期から乳幼児健診で発見し、早期の療育につなげて、本人なりの支援をしていけば、企業に就労し、社会的に自立できるのに、必要な支援がなされず、二次的なさまざまな障害を合併し、自立を遠ざけていた。
現状の実証的なデータでは、児童虐待の半数以上に何らかの発達障害が見られ、育てにくい子どもであることから虐待のハイリスク群ともなっていることが明らかになっている。また、学齢期以降についても、不登校の3分の1は発達障害児であり、必要な細やかな支援がなされないことで、不登校にいたっていることも明らかになっている。注意欠陥/多動性障害が未治療のままの場合、5割に行為障害(非行)へ移行するリスクがあることも実証的に示されている。また、成人期の「ひきこもり」と総称される社会的不適応のなかにも、発達障害者が含まれている。従来、対応がうまくなされないことで二次的な問題を起こし、社会問題化してからしか対応がなされなかったと言える。その最悪の例が、全体としては極めて稀なものだが、長崎幼児殺害事件などの犯罪例である。
反対に、われわれの継続的な支援の中では、知的障害のない発達障害を持つ青年たちの80%以上が企業への就労を経験できるようになるなど、支援によって納税者になることができる人たちであることも明らかになっている。
3.早期発見と早期からの支援の有効性
発達障害についての正しい理解が広がり、母子保健の専門家の研修ができれば、乳幼児健診で早期発見が可能になり、早期からの支援(療育) が可能になる。こうした社会性の側面でのチェックが可能になることは、児童虐待の予防ともなる。早期療育を受けた場合とそうでない場合とでは、学齢期以降の適応状況が明らかに異なり、障害に対応した支援を受けない場合に、さまざまな悪循環を重ねていく危険性が高まる。発達障害者支援法のなかで、発達障害が位置づけられることで、早期からの支援が可能になる。
4.特別支援教育の推進による社会的自立能力の育成
学校教育においても、特別支援教育の推進によって、教師の専門性が向上し、正しい指導ができるようになれば、学籍を普通学級におきながら、障害特性や学習障害など子どものニーズにそった個別教育プログラムによって、子どものもっている潜在的な可能性を引き出し、自立に向けた指導が可能になる。理解ない環境で十分な学習指導ができず、いじめられたり、対人関係での傷つきが重なったりすると自己評価が低下し、適応状況が悪くなる。特別支援教育の意義を発達障害児者の生涯発達の中で意味づける上でも、発達障害者支援法は重要な契機となる。
5.障害者雇用制度のさらなる推進による社会的に自立できる青年・成人の育成
発達障害児者について、本人の障害特性と必要度に応じて、ジョブ・コーチ等の障害者雇用制度を利用していくことで、企業就労できる青年が増加し、早期から十分な支援をしていくことで納税者を育成することができれば、本人の充実した社会生活の上でも、社会的にも望ましい。現在、支援が十分に行えていない発達障害児者を発達障害者支援法で対象を明記することで実際的な就労支援が可能になることを期待している。
6.地域生活の充実
知的障害の重複している場合も含め、障害特性にそった支援が地域に存在することで、幼児期から成人期までにわたる一貫した地域での生活が可能になる。精神科疾患を合併した場合も含め、地域でのデイケアなど、支援の受け皿を作っていくうえで、発達障害者支援法はその根拠を示すという意味で重要なきっかけとなる。
7.発達障害者の人権擁護の必要性
消費者被害や犯罪被害にあう発達障害者が非常に多く、対応が緊急の課題となっている。発達障害への理解が進み、人権を尊重し、当事者の主体的な選択をもとに、必要な対応が迅速にできるようになることが望まれる。発達障害者支援法で、守るべき対象が明確になることで実際の支援が可能になることが期待できる。この発達障害者支援法は、従来の縦割り行政から脱し、部局横断的に、福祉、医療、教育だけでなく、労働、司法、警察、消費生活等の、発達障害者が生きていく上で関係する部局が協力して支援することを明確にしている点で、画期的な法律である。
8.発達障害に関わる専門性の向上と専門家の育成の必要性
現在、わが国は先進国で唯一、児童精神医学の独立講座を持たず、専門家の育成を怠ってきた。また、発達障害児者の専門病棟が非常に少ない、あるいは注意欠陥/多動性障害への治療薬の認可も遅れるなど、貧困な医療体制であった。こうした状況を改善し、関連領域も含め、医療、保健、福祉、教育等の専門家を育成し、専門性を向上していくことで、多くの人たちの幸福につながる。専門家を育成するシステムを構築する上で、発達障害者支援法は、現状を改善する大きなきっかけとなることが期待される。
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発達障害支援法案に対する意見ですが、自閉スペクトラムにいる自分としては認知のバランスが悪いため、就きたい仕事に配慮を得ながら働くことが難しかったり、高等教育機関(大学、専門学校など)の就職課でこのような障害に対する理解がないため、障害に適した進路指導を受けることができなかったりといった問題があるため、権利的なニュアンスをもっと盛り込んでほしかったです。(今後に期待するしかありませんが・・・)
またできれば軽度発達障害の人は三歳児検診では発見しにくいかもしれないので、就学前の5歳児検診などができればもっと早期発見が実現するのかもしれません。
そして一番心配しているのが、家族や両親にばかり判断の権限が与えられることにより、本人が支援を必要として医学的にもその立証はできているのに、家族の反対で支援が受けられなくなってしまうことです。
軽度発達障害の人は見えにくい障害なだけに家族には理解されず(受容できず)、とても苦しい思いをしている人がたくさんいます。
そのために家族に内緒で医者に行ったり、障害者としての支援を受けにくい立場にいる人もいます。
こういう障害の人はその障害のために自分の家族を説得するのはより一般の人より大変ですし、このようなことで下手をすれば両親が離婚することだって考えられます。
そう思うと下手なことはできませんし、そうすると皆法律はできても支援は受けようと思いませんから、結局何も動かなくなる危険があります。
このような法案が早急にできることはとても大事ですし、ありがたいことでもあるのですが、この部分が今非常に気になっているところです。